Number Do MoreBACK NUMBER
<あの人はいつどうやって走っているのか?> 柏原竜二 「型破りな練習で2時間5分台を目指したい」
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byNanae Suzuki
posted2012/10/04 06:01
柏原はロンドン五輪男子マラソンをどう見たか。
今夏、富士通はロンドンオリンピックに8名もの日本代表選手を送り込んだ。世界と渡り合う先輩の姿を「テレビ画面を通して目に焼き付けた」という柏原だが、はたしてアフリカ勢が表彰台を独占した男子マラソンの中継をどう見たのだろうか。
「思ったのは、やはり2時間6分台を持っていないとメダルは取れないってこと。5分台とか6分台の記録を持っている選手が優勝争いをしたのであって、端から持ちタイムが10分台の選手とは余力が違った。当然、レースプランも変わってくるだろうし、そこはしっかりと頭に入れて、まずは6分台を狙っていきたいです」
その具体的な方法に話が及ぶと、マラソン日本歴代2位のタイム(2時間6分51秒)をもつ先輩、藤田敦史の名前を出し、がぜん熱い口調で話し始めた。
「これは藤田さんに言われたんですけど、6分台の練習までだったら『オレのを参考にアレンジすれば組み立てられる』と。でも、もし最終的に5分台、4分台を狙うんだったら、『自分の練習方法を見つけなきゃダメだよ』って。これが正解というものがないので、自分で答えを探すしかない。まだその答えは見つかってないですけど、やるからにはつねに上を目指してやっていきたいです」
「型破りなことをしていかないと5分台は出せない」
かつて、日本のマラソンは強かった。男子も、女子も。振り返れば、世界で初めて2時間20分の壁を破った女性ランナーが高橋尚子だが、その偉大な先達と本誌2012 Spring号で初対談。今後の練習を考える上で良い機会だった、と柏原は話す。
「現役時代の話を聞いたんですけど、高橋さんは毎日、40kmの距離を走っていたそうです。僕も合宿中はそれを意識してやってみたんですけど、やっぱりスゴイなって。早朝と午前と午後、あわせて40kmなら走れるんですけど、高橋さんは40kmを走って、午後にまた20kmのジョグをしていたそうですから。
でも、それくらい型破りなことをしていかないと5分台は出せないとも思う。藤原新さんみたいな感じではなくて、僕はもうちょっと違った形でマラソンを成功させたい。型破りな発想を練習にぶつけていきたいです」
ロンドン五輪を前に“無職ランナー”が世間の注目を浴びたのも、裏を返せば、実業団に所属する選手のふがいなさからだった。
平日も練習時間はたっぷりと確保され、寮の食堂に座れば、栄養士兼調理師がおいしい朝飯、夕食を用意してくれる。その厚遇は至れり尽くせりだ。だからこそ、「結果を残すのが大切」と言葉に力を込める。