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<激戦のインディ500を振り返る> 佐藤琢磨 「ワンチャンスに賭けた1コーナーの真相」 

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今宮雅子

今宮雅子Masako Imamiya

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photograph byFutoshi Osako

posted2012/10/05 06:00

<激戦のインディ500を振り返る> 佐藤琢磨 「ワンチャンスに賭けた1コーナーの真相」<Number Web> photograph by Futoshi Osako

残り2周、不利な状況で琢磨が下したギリギリの判断。

「そこから2周は追いつくので精一杯でした。あのふたりは向かい風になるメインストレートで必ず先頭交替をして逃げる練習をしてたから、すごく上手いんです。疑似的に2台ともスリップに入っている状態を作って、速いんですよね。

Takuma Sato
1977年1月28日、東京都生まれ。'02年ジョーダンでF1デビュー。'04年アメリカGPではBARで3位。'06年~'07年スーパーアグリで戦うも'08年チームがF1からの撤退表明。'10年KVレーシングでインディ参戦。'12年レイホールに移籍。世界3大レースの1つインディ500で勝利にあと一歩と迫るもクラッシュ。164cm、59kg

 残り3周になったときになんとか追いついて、残り2周になったときにはスコット、ダリオ、僕の順だったんですけど、僕はそこでダリオを抜いて最終ラップでスコットを抜こうと思ってました。それで狙いを定めてダリオに近づいたら、ダリオもスコットに近づいていって、3台くっついちゃったんですよ。メインストレートで僕はダリオを抜くつもりで行ってるのにそのダリオがスコットを抜きかけたから、一瞬まずいって思った。

“これはやばい。あと2周しかないのに、こんなところで……”と。そのまま後ろにいたら2台が壁になって空気を切り裂いちゃうから、後ろは本当に滑るんです。だから普通は少し間隔を開けたいんだけど、そうするとスコットに入られてしまう。入られたら、どう考えてもゴールまでに間に合わない。だからダリオにぴったりついて行くって決めて、一緒にスコットを抜いたんです。

 残り2周の1コーナーで2位。でもそのときの状態はさすがに厳しいから、速度も落ちてダリオが少し先に行っちゃったんだよね。そこから1周かけてダリオを追いかけたんですけど、あのときは予選くらい心拍数が上がってました。レース終盤の状態で、誰かのクルマについてコーナーを全開で抜けるって、本当にギリギリなんです。でもそれをやろうと思って、アンチロールバーやウェイトジャッカーで調整しながら2コーナーを全開で抜けて。そうしたら、バックストレートでもジリッジリッと追いつくのがわかったんです」

「全開で行ったら追いつける。絶対に1コーナーで勝負できる」。

 誰もが我が目を疑う、あるいは目が追いつかないようなスピードだった。

「僕も難しいだろうと思ってたんだけど、意外に、単独で前を走ると空気の壁が厚そうでした。たとえガナッシといえど、僕が後ろから全開で行ったら追いつくんです。それで3コーナーも4コーナーも全開で抜けて。その間隔とクロージングスピード(追いついていく速度)から、これは絶対に1コーナーで勝負できる、と思いました」

ファイナルラップ、第1コーナーで果敢に仕掛けた、琢磨の意図とは。
勝利への道を切り開くかと思われた瞬間、相手が想定外の動きを繰り出す。
栄冠を逃した悔しさからか、インディ500後には自信を失った時期もあった。
そんな難しい状況の中で、琢磨は理想のフィーリングに気づき始める――。

つづきは、雑誌「Number」813号、もしくはNumberモバイルでお読みください。
最強打者の逆襲。~Baseball Climax 2012~
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