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南アフリカでの失意から2年を経て、
中村俊輔が取り戻したプレーの輝き。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2012/08/18 08:01
限界説もささやかれていたが、ここ数年で最高のプレーを見せている中村俊輔。年齢を重ねても、彼の類いまれなセンスは全く損なわれてはいない。
失意の南アW杯以降、存在感を失っていた中村だが……。
今季の横浜FMは、ストッパーを本職とする富沢をボランチで起用したことで守備が安定し、途中加入のマルキーニョスがコンディションを上げたことで攻撃にも厚みが増している。第21節終了時点で失点19は鳥栖と並ぶ最少タイ、得点は27とややもの足りないが、最近3試合では8得点と上昇機運にある。14戦無敗という記録は、近年シーズンを通じた安定感に大きな課題を抱えていたチームにとって何よりの好材料と言えるだろう。
チームの中心には中村の姿がある。
失意の南アフリカW杯から2年以上の歳月が流れ、中村は代表からの引退という大きな決断を下した。それを機に、日本サッカー界における彼の存在感が薄情とも言えるほど急激に小さくなったことは言うまでもない。確かにあれから2年間の中村はプレーに精彩を欠いていたし、どこかふっ切れないままピッチに立っている気さえした。そもそも過去2年間はクラブ自体が混迷期にあり、腰を据えてサッカーに打ち込める環境ではなかったと言えるかもしれない。友との突然の別れもあった。
ブラジルW杯を目指す日本代表には中村の輝きが必要!?
しかし今、中村のプレーはかつての輝きを完全に取り戻しつつある。新潟戦で見せた“らしい”プレーの数々は、やはり中村が、他の選手にはない独特の技術とセンスを持つ特別な選手であることを雄弁に物語っていた。
そのプレーを見てすぐに頭をよぎったのは、ザックジャパンにおいて唯一“替えの利かない”存在である遠藤保仁の“代え”は、もしかしたら限りなく近い感覚を持つ彼にしか務まらないのではないかという確信に近い疑問である。ブラジルW杯を目指すアジア最終予選は、まだ始まったばかりだ。