ロンドン五輪EXPRESSBACK NUMBER
世界の壁に何度跳ね返されても……。
福士加代子が語る再挑戦への思い。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTetsuya Higashikawa/JMPA
posted2012/08/12 14:50
30歳で迎えた3度目のオリンピック。「もう一回走りたいな」と語った福士だが、4年後のリオ五輪を目指して挑戦を続けるのか、注目が集まる。
5000m予選、作戦通り終盤近くまで先頭を守ったが……。
福士が流れを作り、新谷、吉川が続いたが、その後、日本の3選手は集団に飲み込まれ、遅れていった。
福士は日本勢では9位に入った新谷に次ぐ10位。
「5000mも頑張ります」
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と言い残して迎えた、7日の5000m。予選1組に出場した福士は、1周目から先頭に立つ。その後も4400m辺りまで、先頭を守る。
しかしそこから、アフリカ勢のスパートに対応できなかった。
結果は、15分9秒31。この組の8位にとどまり、予選2組とあわせると17位。決勝進出ラインの15位まで、わずかにおよばなかった。
「(他の選手を)振り落とせるだけ振り落とそうと思っていました。もう最初から行くしかないでしょう」
と、意図を語った。スパートで劣ると知るからこその仕掛けだったが、決勝に進むにはいたらなかった。
こうして福士は大会を終えた。
笑顔で取材に応じるなかで垣間見せた、寂しそうな表情。
10000mの順位は、アテネ、北京を上回った。5000mでも今シーズンのベストとなるタイムをマークした。
それは一定の成果と言えなくもない。
だが、どんなレースのあとでも笑顔を見せるように、2つのレースのあとも笑顔で取材に応じた福士は、その合い間に一瞬、寂しそうな表情を見せた。それは今回も世界に通じなかった悔しさからだったのかもしれない。
5000mを終えたあと、福士はこう口にした。
「もう一回走りたいな」
なによりも、オリンピックで入賞するという目標は果たしていない。
その言葉には、まだ燃え尽きていない、まだやり残したことがあるという気持ちがこめられているようだった。