なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
決勝戦で宿敵アメリカと互角の戦い。
未来につながる、なでしこの銀メダル。
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph byNaoki Ogura/JMPA
posted2012/08/10 13:10
五輪後に代表監督の勇退が有力視させている佐々木監督は、こうコメントを残した。「明るく正義感があってフェアプレーで常に相手をリスペクトする。それが結集すると小さい子たちでもパワーを出す。それがなでしこジャパンに植え付けられていることを誇りに思う」
北京五輪でもロイドのミドルシュートで負けていた日本。
ミドルシュートは、ロイドの得意とするプレーのひとつ。
そして日本の国内リーグではなかなか体験できない射程距離とタイミングだけに、守備者の体の反応がわずかに遅れてしまう。
北京五輪のグループリーグでなでしこがアメリカに0-1で敗れた際も、勝負を決めたのは彼女の糸を引くような中距離砲だった。4年後、やはりこの決勝でも、彼女はシュートコースが見えると躊躇なくどんどん狙ってきていた。
ただし、日本はずっとアメリカの後塵を拝していたわけでは決してない。
試合の立ち上がりこそ押し込まれてペースを握られ(このことが結局、決勝戦のトーンを決めてしまった感も否めないにせよ)たが、最初の失点を喫したところで気持ちが切り替わり、以後はなでしこらしい崩しで次々にアメリカゴールへ襲いかかった。
守備でも連動したプレスが機能し、アメリカがボールを回す先々に日本選手が待ち構えていて、苦し紛れの放り込みしかできない状態に持っていっていた。後半も失点こそしたものの、38分の岩渕の決定機など、オープンな互角の攻め合いを演じた。
川澄が左サイドを完全に制圧し、大野のドリブルが冴え渡った。
この日、出色だったのは川澄と大野だ。
川澄は長い距離の高速アップダウンと正確なボールコントロールで、左サイドを完全に制圧した。大野はドリブルでの仕掛けが冴え渡り、アメリカ選手が容易に飛び込めないので、それがさらに日本のアタックのタメになるという好循環を作り出していた。
もちろんいつも通り、澤の展開力や大儀見の前線でのキープ力も機能していた。
敵の最大の脅威は封殺した。チャンスは数多く作った。ただ、あとひとつのゴールが決まらなかった。
特に目につく敗因があるわけではなく、「彼女たちの日ではなかった」としか言いようのない試合というものがある。アメリカ戦も、そんなゲームのひとつに数えていいのではないか。