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男子テニス決勝は、全英の再戦に。
A・マリーが手にした金メダルの重み。 

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秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byGetty Images

posted2012/08/07 10:30

男子テニス決勝は、全英の再戦に。A・マリーが手にした金メダルの重み。<Number Web> photograph by Getty Images

7月のウィンブルドン決勝では、イギリス人選手として76年ぶりの優勝に期待がかかったが、決勝でフェデラー(写真左)に敗れたマリー(写真中央)。2週間後に訪れたリベンジの舞台で、見事雪辱を果たした。

五輪金メダルを獲得し、興奮を隠しきれないセリーナ。

 初の金メダルは、女子ではシュテフィ・グラフ(ドイツ)に次ぐ史上二人目の生涯ゴールデンスラム達成、つまり四大大会と五輪の全制覇を意味していた。

 優勝を決めたセリーナは、コート上を飛び跳ねながら喜びを爆発させた。あふれ出る感情を抑えきれず、場内の音楽に合わせてベンチ脇で踊り出す姿もあった。北京でフェデラーがそうだったように、彼女もまた少女に戻っていた。

「シングルスで金メダルが取れるなんて思ってもみなかった。ここでキャリアが終わっても、私には金メダルがある。私はテニスで得られるすべてを自分のものにしてしまったのね。ここから私、どこを目指せばいいのでしょう。ディズニーワールドにでも行けばいいのかしら」

 女子テニス史上最強の選手の一人に数えられるセリーナは、興奮を隠しきれない様子で話した。

決勝は、4週前に行なわれたウィンブルドン決勝の再戦に。

 セリーナと同じく生涯ゴールデンスラムを狙った男子シングルス第1シードのフェデラー(世界ランク1位)は、順当に勝ち上がった。決勝までの最大の関門は、世界ランク9位のフアンマルティン・デルポトロ(第8シード/アルゼンチン)との準決勝だった。タイブレーク制を採用しないファイナルセットはもつれにもつれ、19-17で決着した。試合時間4時間26分は3セットマッチでは男子ツアーの最長記録となった。

 マラソンマッチから中1日で迎えた決勝。フェデラーの相手は、準決勝で世界ランク2位のノバク・ジョコビッチ(第2シード/セルビア)を破った地元英国のアンディ・マリー(世界ランク4位/第3シード)だ。4週前に行なわれたウィンブルドン選手権決勝の再戦である。

 前回と同様、マリーは立ち上がりから全力だった。攻守の切り替えが彼の持ち味だが、攻め手が遅く、そこにつけ込まれることも多かった。選手権では結局、逆転を許したが、その戦い方は間違っていない。今回も同じ戦法で挑んだのは当然だった。

 彼に幸いしたのは、降り続いていた雨が試合直前に止み、開閉式の屋根が開いたことだろう。選手権の決勝では逆に、試合途中に雨が降り出し、屋根を閉じて試合を続けた。英国の気まぐれな天候が屋内コートを得意とするフェデラーに味方したのだ。しかし、この日は試合終了まで屋根が閉まることはなかった。

【次ページ】 決勝までの試合で心身ともに磨り減っていたフェデラー。

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