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“女子マラソン王国”日本、崩壊!
求められる強化策の抜本的改革。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byShinji Oyama/JMPA
posted2012/08/06 16:50
レース後のコメントは以下の通り。「故障でちゃんと練習できていなかった」(重友)、「後半に順位を上げるプランだったが……」(尾崎)、「スピードアップに対応できなかった」(木崎)。
メダルは遠くなりにけり。
もはや、女子マラソンの「王国」は、幻想にしか過ぎない。
日本人がそれを受け入れる時がきた。いや、とうの昔に来ていたのだが、苦い薬は進んで飲みたくはないものだ。
日本勢の3人の結果はというと、木崎良子が16位、2009年のベルリンの世界選手権でメダルを獲得し、期待が高かった尾崎好美が19位、そして重友梨佐が79位という結果に終わった。
15キロ地点では尾崎、重友が大集団の前に出て、積極的なレースを仕掛けるように見えたが、それも束の間のことだった。
中間点付近で脱落し、その後は国際映像で日本の3人が映ることは稀になり、見せ場のないままレースが終わってしまった。
個人でも速いケニア勢が、団体でのレース戦略まで立てていた!!
今回、日本勢は危機感を募らせていた。昨年、韓国・大邱で行なわれた世界陸上では赤羽有紀子の5位が最高で、5人の代表のうち、上位3人のタイムで争われる団体戦でも4位という結果に終わった。
世界陸上で衝撃的だったのは、ケニアの5人が給水、レースプランなどを共有していたことだった。
かつて、ケニアといえば選手たちはシューズメーカーごとに練習をするなど、「派閥」があったのだが、ここ数年は「チームケニア」の発想から、代表が合同練習をするようになっていた。しかもレース中、どのタイミングで集団を揺さぶるのか、そこまで情報を共有していた。
今回のロンドン・オリンピックのレースでも、給水では常に連係を図り、ミスのない工夫をしていることが映像でわかったと思う。
世界陸上、オリンピックといった大きな国際大会では、マラソンという個人競技でありながら、「団体力」が試される時代になっていたのだ。
日本も、事前の策をもろもろ用意していたのだが……。
日本も手をこまねいていたわけではない。
今回、事前に所属の違う3人がアメリカ・アリゾナで合同合宿を張るなどして、ある程度、レースプランの共有や、給水などの連係を確認した。
レースでは一度、集団から離されることまで想定していたようで、尾崎はレース後に、
「落ちてくる選手を拾っていくというイメージを持っていたんですけど、その展開に持っていけなかったのが残念」
と話していたが、終始、主導権を握れないままにレースが終わってしまった。