ロンドン五輪代表、最大の挑戦BACK NUMBER
関塚ジャパン、モロッコ破り決勝Tへ。
2つの“誤算”克服し、成長を証明。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNaoki Ogura/JMPA
posted2012/07/30 12:00
スペイン戦で再三の決定機を外した永井だったが、モロッコ戦ではそのスピードを生かし、値千金の決勝ゴール。セント・ジェームズ・パーク(ニューカッスル)を埋めた観客も総立ちで沸いた。
ついに、ベスト8進出である。
しかし、モロッコの個人技とフィジカルの強さに苦しめられ、難産の末に得た勝ち点3だった。
7月29日、ロンドン五輪男子サッカー1次リーグ第2戦。
この試合が困難になるだろうことは、スペイン戦に勝った時点で察しがついていた。
永井謙佑のスピードを活かし、スペインのDF陣を混乱に陥れた日本の高速カウンターを封じるために、モロッコは間違いなくスペースを消してくる。逆に、日本はボールを保持する時間が長くなり、能動的に攻撃しなければならない。戦い方がスペイン戦とは真逆になるのだ。
キャプテンの吉田麻也もそのことを見越して、試合前にこう話していた。
「モロッコ戦のポイントは、攻撃のバリエーションを増やすこと。決め切ること」
果たして、モロッコは、永井のスピードを恐れてラインを下げ、スペースを与えなかった。一方、攻撃はフィジカルの強さを持つ9番のFWアムラバトを目掛けてボールを蹴り、そこを起点にするというシンプルな戦術を採っていた。日本は、予想通りスペイン戦よりもボールを保持する時間が長くなったが、なかなか攻撃の形を作れなかった。
日本の選手たちを待ちうけていた2つの誤算。
永井は、言う。
「相手がベタ引きしていたんで、スペースがまったくなかった。だから、大津と話をして、ポジションチェンジをしました。自分が前にいるよりもサイドで裏のスペースに抜けることでチャンスを作ろうと思ったんで。でも、なかなか難しかったですね」
日本は、永井のスピードを活かすことも、いつものパスワークを活かすことも、なかなかうまく行かなかった。
それには、2つの誤算があった。
ひとつは、芝である。スペイン戦のグラスゴーは、試合前に入念に水が撒かれ、ボールが転がり、パススピードが出るような状態になっていた。だが、今回はドライで、いつものようにテンポよくボールを繋ぐことが難しくなっていた。そのために、なかなか攻撃のリズムを作れなかったのだ。
もうひとつは、スペイン戦の疲労のダメージが、想像以上に大きかったことだ。試合前日、清武弘嗣は「みんな、若いんで大丈夫っすよ」と言っていたが、十分に回復してはいなかった。試合序盤、日本の選手はまったく動けていなかったのだ。