ロンドン五輪探検記BACK NUMBER
ロンドンは燃えているか?
妙に「ツンデレ」な現地の空気。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph bySports Graphic Number
posted2012/07/27 16:30
聖火ランナーとして活躍したロンドン大学のエリート学生3人組。彼らにお願いして聖火のトーチをもたせてもらいました。意外に、重い。感覚的には1000mlの牛乳パックよりちょっと重いくらいで、これを片手に走るのは想像したよりも大変そう。
あらゆる言語でカオス状態になっているパブ。
では、ロンドンが五輪関係でまったく盛り上がっていないかというと、そうでもない。
オリンピック・パークのスタッフは、ボランティアも軍人も皆さんとてもホスピタリティに溢れているし、街中もたくさんの人で賑わっていて、夜になるとパブからはお客さんがあふれだしてくる。ぬるいビールを片手に会話に耳を傾けると、ドイツ語、フランス語、中国語、そして(たぶん)アラビア語と、飛び交う言語も多種多様だ。
なかなか複雑な状況ではあるのだが、先日、この「わかりにくい現地の空気」を象徴しているなぁ、と思わされるシーンに出会った。
ロンドン大学の前を通りかかったときのことだ。
キャンパス内に人だかりができており、何かオリンピック関連のイベントでもやっているのかと立ち寄ってみると、聖火のトーチを持った3人の男子が記念撮影に応じていた。
話を聞いてみると、彼らは昨日聖火ランナーをつとめたロンドン大学の学生とのこと。3人は謙遜していたが、ハンドボールの学生チャンピオンに、ボランティア団体の創設者など学内で選び抜かれたエリートらしい。
彼らに「オリンピック、楽しめそう?」と尋ねると、「もちろん。せっかくロンドンにいるんだから」と、そっけない表情で答えた。
そのときは何気なく聞き流していたのだが、あとで思い返すと……この態度こそがスタッフやメディア、そして選手を除いた地元ロンドンっ子たちのオリンピックに対する偽らざるスタンスなのではないだろうか。
ロンドンっ子はみんな“ツンデレ”に過ぎない!?
<財政が厳しくて公共サービスは悪くなるのに、オリンピックには多額の予算をつぎ込んじゃって……。しかも、地下鉄は混んでるし、道路は渋滞するし。いいことないよ。でも、せっかく地元で開催するんだし、いくつかイベントには参加してみようかな。せっかくだしね。チケットが余っていれば観戦にも行こうかな。期待している種目? もちろんテニスのマレーだよ!>
一言でいえば、ツンデレ。表面的なそっけなさと、その奥に隠されたピュアな好奇心。開催地心は複雑です。
このコラムでは、編集部からひとり寂しく派遣された体育会系編集者(男子・28歳独身)が、ちょっとナナメの視点からロンドンオリンピックを「探検」し、その様子をレポートしていきたいと思っています。
大会期間中、どうかお付き合いください。