フェアウェイの舞台裏BACK NUMBER
練習せず活躍する手嶋プロらに学ぶ!
アラフォー・プロゴルファーの秘密。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byWataru Murakami
posted2012/07/19 10:30
セガサミーカップで一時はトップタイまで並んだ手嶋多一は、最終日を67で回り、通算15アンダー、3位タイで終了した。
「調子が悪いのに練習すると下手を固める練習になる」
だからといって、向上心がないというのともちょっと違う。'07年には予選会を経てヨーロッパツアーに飛び込んだ。挑戦心も野望もあった。そして、ヨーロッパではとにかく練習したのだという。
「なぜかというと……」と手嶋は自ら問いかけておいて、「することがないから!」とどうだと言わんばかりに少し鼻の穴を広げて言った。
「ヨーロッパではコースの周りにホテルがあまりないから、コース内のホテルに泊まるんですよ。テレビを見てもよく分からないし。することがなくて調子が悪いのに練習するから下手を固める練習になっちゃう。アプローチやパットのショートゲームを練習した方がピンチで生きると分かっていても、調子が悪いとどうしても長いクラブのショットに偏るんだよね。でも、いくらやっても日によって調子は違うから、あんまりスコアには結びつかない」
久々の練習の日々もむなしく、欧州ツアーの戦績は19試合で予選通過9回と芳しい成績は残せなかった。そんな経験がラウンド後の手嶋の足を練習場からさらに遠のかせ、「僕はあまりメカニックに考えないで、勘でやるタイプ。テンポとリズムだけを考えてるんで」という考えをさらに強固にしていった。
練習を我慢することが好成績に結びついた鈴木亨。
セガサミーカップでは、そんな手嶋とは対照的に、やりたい練習を我慢することで好成績を収めた選手もいる。ツアー通算8勝、一昨年まで18年連続シードを保持し続けてきた46歳の鈴木亨である。余談ではあるが、鈴木は人気アイドルグループ「℃-ute」の鈴木愛理の父でもある。
今季の鈴木は初日に好スコアを出しても最後まで続かずに、2日目に早々と息切れしてばかりだった。そんな話をツアーのフィットネススタッフと話していると「練習をしていないとサボってるととらえがちだけど、休むのも練習のうちですよ。球数を半分にしてみたらどうですか」と提案されたという。
確かに開幕前日のプロアマ戦のメンバーから漏れることが多くなり、練習場にいる時間も自然と長くなっていた。必然的に球数は増え、疲れがたまるようになっていた。
そこでこの大会で取り入れてみたのが100球の球数制限。
やってみた感想は「物足りない」。しかし、最終日まで崩れることなく、今季初のトップ10入りという結果はついてきた。
「長い目で見ていろいろ考えていかないとね。もう少し現役でやっていきたいから」と鈴木は新しい発見をしたようだった。