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陸上界に“第二の室伏”誕生か!?
やり投げ・ディーン元気の爆発力。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAkihiro Sugimoto/AFLO SPORT
posted2012/06/11 11:45
生まれ育ちは関西のディーン元気だが、父親のジョンさんの故郷はイギリス。ロンドン五輪出場は家族との約束でもあった。同じ投てき競技で五輪金メダリストの室伏広治が目標だという。「まだ及びませんが、次の五輪(リオデジャネイロ)では同じぐらいの実績を残したいですね」とコメントした。
大学入学後、ディーンが急成長した理由とは?
それにしても、その成長ぶりは目を見張るものがある。
ディーンは高校時代にやり投げを始めた。先に取り組んでいた円盤投げとの掛け持ちで、高校3年のインターハイで優勝しているが、やり投げの自己ベストは70m57と、高校記録に約6mおよばない記録しか残していない。
ところが早稲田大学に入学後、一気に開花する。入学から2カ月後の5月、関東インカレで71m89と、自己記録を1m以上更新し優勝。6月の日本選手権では74m06とさらに記録を伸ばし3位。7月には世界ジュニア選手権に出場し、76m44の自己新で銀メダルを獲得したのだ。
急成長の理由は、もとから備えていた体をしならせる能力などに加え、日本陸上競技連盟投擲副部長を務める田内健二氏の指導を受けるようになったことが大きい。その中で技術を磨き、体幹トレーニングなどで身体を作り上げてきたことが急成長につながったのだ。
昨年こそ、左膝の故障に苦しんだが、今年になって回復。2月に約3週間、「やり投げ王国」と言われるフィンランドのナショナルチームの練習に参加したことで細かな技術も向上し、勢いを取り戻したのが今シーズンである。
まだ世代交代は早すぎる! 第一人者・村上もさらに進化を。
一方、敗れたとはいえ、村上も2、3投と好記録を立て続けに出し、第一人者たる姿を示した。
「負けたのは悔しいですが刺激になりました。僕が投げたいという感覚とはマッチしていませんでした。いい言い方をするなら、この状態でそれだけ飛ぶのはいいと思う」
と言う。修正ができれば、さらに記録を伸ばすことも可能だということだ。
厚い壁に跳ね返されてきた種目が多い陸上競技にあって、ロンドン五輪へ向けて競い合う2人は、その壁を打ち破る可能性を秘めている。