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“バルサ流サッカー”導入不発も、
L・エンリケがローマに残した熱い心。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2012/05/23 10:31

“バルサ流サッカー”導入不発も、L・エンリケがローマに残した熱い心。<Number Web> photograph by AFLO

会見をするルイス・エンリケ。バルセロナBの監督からローマに移ると、セリエ3大クラブに対抗するための長期的な計画を託されていたが、チーム低迷のため周囲から大きな批判を浴び、わずか1年での辞任になった。

気性の荒い選手たちに負けぬ熱血さで対峙したが……。

 誰もが若かった。ラメラやオズバルドといったリーベル・プレート出身の新FWたちは気性が荒く、敗戦の責任のなすりあいからロッカールームで殴り合いの喧嘩を起こしたこともある。ボージャンも起用法への不満からユニフォームを投げつける愚行を犯した。

 L・エンリケは空回りする選手たちの若さを正面から受け止めつつ、チーム作りに必要な規律を叩き込もうとした。4失点で大敗した25節アタランタ戦では、試合前日ミーティングに4分遅刻したデ・ロッシを敗戦覚悟でベンチ入りすらさせずに範を示した。

「おまえら、それでも男か!?」

 4失点で敗れた31節レッチェ戦後、L・エンリケはやはり選手たちを怒鳴りつけた。現実主義的でシニカルな指導者から出てくるはずのない熱い台詞。ローマを去る際には、けじめを見せるため頭を丸刈りにするほど、彼らと向き合おうとした。

エンリケが命がけで蒔いた“バルサの種”は花開くか?

 辞任を知った選手たちは一様に「彼が作り上げたベースは捨て去るべきじゃない」と口を揃えた。バルサでの盟友グアルディオラも自らの退任前に「自分もプレーしたからわかるが、ローマを取り巻く環境は激しいからね。ルイスはとてつもない大仕事に立ち向かったのだと思う」と苦闘の1年をねぎらった。

 ローマの来季指揮官は、今季カターニャを躍進させたモンテッラでほぼ間違いない。今季彼が率いたカターニャは、小気味よいパスワークとさまざまなフィニッシュ・パターンを駆使して“小さなバルセロナ”と称賛された。来シーズンのローマの戦術のベースもL・エンリケが残したバルサ譲りの4-3-3になるはずだ。もし来季モンテッラの下でスペクタクル・サッカーが開花するなら、土壌を耕して種をまいた熱血指導者は誰だったのか、怒鳴られ続けた選手たちが知っている。

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