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首位ロッテは独走態勢に入れるか!?
主将・今江敏晃が鍵を握る交流戦。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/05/16 12:00
2005年から4年連続でゴールデングラブ賞を受賞している今江敏晃。5月以降は4割近い打率で、チームを上昇気流にのせる原動力となった。
スランプを乗り越えるためには手段を選ばない。
4月下旬に巨人の高橋由伸が、打撃回復のために金属バットを使用して練習をしていることを報道で知り、すぐに試した。
5月に入ってからも昨季の自身の安打を収めたDVDを見直し、手首に力みがあったことでボールとの距離感が掴みにくくなっているという欠点に気づいた。
さらに打撃コーチの長嶋清幸から「スイング時に右手を二塁方向に出すよう心掛ければ体の開きが抑えられる」と助言され、それを真摯に受け入れた。
不振から脱出できると思えば何でも試す。今江のその姿勢が、5月の好成績に結び付いたのだ。
「4月の成績を考えたらまだまだ、と言いたいところですけど、いいときの感覚さえ戻ってくれれば調子はもっと上がってくると思うんで、早くそうなりたいです」
打撃面では手ごたえを掴みつつある。もちろん、中距離ヒッターである彼本来の、外野の間を鋭く破る打球が増えれば、チームにとっても大きな力となるだろう。
地の利を生かした、“ならではの”ゲームメーク。
それ以上に期待されるのは、今江の主将としてのゲームメークだ。
今江自身、主将としての役割など多くは語らないが、西村監督は「キャプテンとしての仕事はしてくれる」と、折に触れ彼の貢献度を評価している。
それを象徴したゲームが、5月13日のソフトバンク戦だった。
2対2の同点で迎えた6回、今江は1死無走者からサードにセーフティバントを決める。「意表を突いた」でまとめられがちなそのプレーも、彼からすれば必然だった。
「あの辺にいたら(アウトにするのは)無理やな、と思ったんで。ホームのサードを守っている僕だけの特権じゃないですか」
ソフトバンクのサード・松田宣浩はベースのやや後ろを守っていた。他の球場であればその位置でもアウトにできただろう。だが、QVCマリンフィールドは昨年、人工芝を張り替えたことで芝が長くなり、打球の勢いは以前よりも失われている。
ホームを知り尽くしている今江だからこそ、相手の微妙なポジショニングから隙を見出せるわけだ。