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フランク・ウイリアムズも70歳――。
8年ぶりのF1優勝にみた先見の明。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2012/05/16 10:30
スペインGPを制したパルトール・マルドナドについて尋ねられたフランク・ウイリアムズは「マルドナドは非常に速いだけでなく、ミスもしないからね」と答えた。マルドナドは年間王者になれる資質がある、という旨のコメントも。
そのチャレンジ精神で多くのF1ドライバーを育んできた。
こうしたチャレンジ精神は技術開発の分野だけでなく、ドライバーとの契約に関しても同様である。
フェラーリやマクラーレンが経験豊富なベテランや、チャンピオンが狙えるトップドライバーを選り好みする傾向にあるのに対して、ウイリアムズは古豪チームとしては珍しくルーキーを積極的に起用してきた。
注目すべきは、それらのルーキーを起用してきただけでなく、きちんと結果を残すまで成長させていることである。その最たる例が、'93年のデーモン・ヒルだ。
類稀な先見の明は、チーム創設から30年以上経った今も健在。
ウイリアムズはその前年の'92年にドライバーズ選手権とコンストラクターズ選手権を圧勝。しかし、ダブルタイトル獲得に貢献したナイジェル・マンセルとリカルド・パトレーゼとは契約を更新せず、アラン・プロストを復帰させることにしていた。ところがそのチームメートがなかなか決まらない。
果たしてウイリアムズが選んだのは、わずかF1に2戦しか出走経験がないヒルだった。
当時この人選を疑問視する関係者も少なからずいたが、大方の予想に反してヒルはこの年、3勝を挙げ、3年後の'96年には見事チャンピオンに輝いた。
ヒルや冒頭で紹介したモントーヤ以外にも、ケケ・ロズベルグ、ナイジェル・マンセル、ティエリー・ブーツェン、デビッド・クルサード、ジャック・ビルヌーブ、ハインツ-ハラルド・フレンツェン、ラルフ・シューマッハら多くのドライバーが、ウイリアムズで自身F1初優勝を果たしている。
優勝することはなかったが、ジェンソン・バトン、ニコ・ロズベルグら、多くの才能あるドライバーがF1へデビューしたのも、このウイリアムズからだった。
その先見の明は、チーム創設から30年以上経ったいまも変わらず、2010年の暮れにはマルドナドを獲得し、'80年代以来となるベネズエラ人F1ドライバーを誕生させていたのである。