ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
ラウールが変えたブンデスリーガ像。
シャルケを去るスターが残したもの。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byItaru Chiba
posted2012/05/10 10:30
今年2月にはキャリア通算400得点を達成。CLでの最多得点記録(71点)も保持している。来シーズンはどこでプレーするのだろう?
厳しかったマガト監督もラウールだけには自由を許した。
チームを率いていたマガト監督は、選手たちが派手なプレーをすることを禁じていたのだが、ラウールにだけはどんなプレーも許していた。
他の選手ならば指揮官の逆鱗にふれるようなループシュートを放ち、しかもそれでゴールを揺らしてしまうのだから、周囲はただただ尊敬の眼差しを浮かべるしかなかった。
スペインからやってきたスーパースターはチームにもすぐに馴染んだ。
同じ時期にチームに加わった内田篤人は当時、「(練習のときなどに)けっこう、普通に個人的にアドバイスを送ったりしているよ」と言っていた。
さらに内田篤人が驚いたのは、その高いプロ意識だった。
ある日の練習のあと、疲れをとるためにクラブが用意している水風呂へ行くと、そこにラウールがいた。毎日のように水風呂に入っているのかと内田が問うとラウールは、当然であるかのように首を縦に振ったという。
「あー、結局日々のこういう積み重ねなんだなと思った」
内田はそう語っていた。
ブンデスリーガの魅力をより輝かせてくれたラウール。
お別れ試合となった今季のホーム最終戦でのセレモニーのあと、ラウールはこう話している。
「アウェイゲームには3000~4000人のファンが来て、ホームゲームはいつも満員御礼。シャルケは本当に、本当に特別なクラブだ。ここでプレーするのは、本当に楽しかった。今季は3位になり、来季のCLに出場できるのはスポーツ面でも、経済面でもクラブにとって良いことだよ」
ラウールはドイツにやってくる理由として、ブンデスリーガでは数多くのゴールが生まれ、常に大勢の観客に囲まれてプレーできることを挙げていた。レアル・マドリーでプレーしていた時代にも、TVでブンデスリーガの試合をチェックしていたという。
昨季のブンデスリーガの観客動員数は一試合平均42357人、1試合あたりのゴール数は2.92点で欧州主要リーグのトップを記録した。
ラウールが加入してからも観客動員は年々増え続けている。
ラウールのいた2年間は彼にとって、濃密な時間であった。同時に、レアル・マドリーにあってクラブレベルでのあらゆる栄冠を手にした者にとっても、ブンデスリーガは魅力的なリーグなのだということを全世界に知らしめた2年間だったのかもしれない。