フェアウェイの舞台裏BACK NUMBER
米メジャー初制覇を目指す宮里藍。
今季の勝利の秘訣は“女優力”?
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAP/AFLO
posted2012/05/09 10:30
4月18~21日に開かれたLPGAロッテ選手権では2位に4打差をつける通算12アンダーで優勝。米国女子ツアー通算8勝目を達成した。
宮里藍のレッスンが受けられると期待して出かけていって、こんなアドバイスが飛んできたらあなたはどうするだろうか。
「みんな女優になってくださーい!」
昨年12月に仙台でジュニアクリニックを開催した時のこと、宮里は参加した高校生ゴルファーたちに向かってこう呼びかけていた。
ドライバーはこう打てとかスイング中の体の動きはどうだとか、そうした一般的なレッスンとはかけ離れたアドバイス。ただし、出し惜しみをしているわけではまったくない。この一言が確かに宮里のゴルフの真髄なのである。
自分で台本を書き、演じる――それが宮里藍流のメンタル術。
ホール間のインターバル、宮里はスコアカードに鉛筆を走らせる。そこにはスコアとは別に、暗号のように小さな数字が書き込まれている。たとえば「S55 P5」「S43 P4」といった具合に。
これはそのホールのプレーを一打ごとに5段階評価で自己採点したもの。Sはショット、Pはパット。ジャッジの基準となるのは「打った球がどこにいったかじゃなくて、自分に約束したことを最後までできたかどうか」である。
9番アイアンのハーフショットでグリーンのセンターを狙う。
7番アイアンのパンチショットでピンをまっすぐに攻める。
イメージがあいまいなままだったり、なんとしてもバーディーを取って追いつきたいなど余計な思考が入れば、結果はどうあれ点数は低くなる。
先のジュニアクリニックにおいても「違うクラブで10回、違うターゲットに打ってください」と指示を出した後、高校生が球を打つたびに「自分に約束したことをちゃんとキープできた?」「100%できた?」「なら、よし!」と声をかけていた。
一打ごとに台本を与えるのは自分自身。その筋書きを頭に焼き付け、ひとたびボールに向かえば決められた演技に徹する。それが宮里の流儀。だから女優という言葉が出てくるのである。