フェアウェイの舞台裏BACK NUMBER
米メジャー初制覇を目指す宮里藍。
今季の勝利の秘訣は“女優力”?
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAP/AFLO
posted2012/05/09 10:30
4月18~21日に開かれたLPGAロッテ選手権では2位に4打差をつける通算12アンダーで優勝。米国女子ツアー通算8勝目を達成した。
まるで体操やフィギュアの選手のようにプレーする宮里。
宮里は5年前の夏からプロコーチであるピア・ニールソンとリン・マリオットに師事してきた。彼女たちから学んだのは「ビジョン54」と呼ばれる思考法。米ツアー通算8度の賞金女王に輝いたアニカ・ソレンスタムらもこれを実践してきた。ショットごとの自己採点も、大スランプに陥っていた'08年頃に取り入れたメソッドである。
今の宮里を見ていると、スコアを競い合う対人競技ではなく、体操やフィギュアスケートと同じ採点競技としてゴルフを捉えているように感じる。
今季の米ツアーでの優勝争いにおいても、自分の力が及ぶ範囲と及ばない範囲をはっきりと区別していた。
「相手が良ければそれまでの話。とにかく自分は自分のベストを最後まで尽くすだけ。リーダーボードを見ても本当にただの情報として、自分の今の状況と切り離して相手のプレーを見られた」
世界1位のヤニ・ツェンらとの競り合いについても「それは自分にとっていいモチベーションにはなる」とさらりと言う程度なのだ。
目の前の一打に集中する。という言葉はあらゆるゴルファーが簡単に口にすることではあるが、宮里ほど高い次元でそれが実行できている選手はなかなかいないだろう。
コントロールできるのはショットを打つまでの自分自身のことだけ。ボールの跳ね方や転がりまでは制御しきれるものではないし、周りの選手のスコアなど当然動かしようもない。どうにもならないことに力を費やすのは無駄というある種の達観である。
「優勝のことは早く忘れたい」
今季日本ツアー初参戦となった、メジャー大会でもある「ワールドレディス・サロンパスカップ」でもそんな考え方の一端が垣間見られた。
宮里はその直前にハワイで行われた米ツアーで今季初優勝を飾って帰国した。だが、余勢を駆って試合に臨みたいと言うどころか、ブレーキをかけるかのごとく「優勝のことは早く忘れたい」と口にしたのだった。