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<マラソン特別講義> 長谷川理恵 「女性ランナーブームの火付け役」
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph byAtsushi Hashimoto
posted2012/05/06 08:00
「もうマラソンなんてバカらしい。やめよう」
だけど色々な人に「モデルなんかが本当に走れるのか?」って言われて、一生懸命やっているのにとても悔しくて。だったらみんなができないことをやろう、と決めたんです。「3時間15分を切って、東京国際女子マラソンに出る」ことを目標に、そこからは記録優先。でも参加資格の3時間15分がなかなか切れない。夏は実業団の合宿に参加したり、ときにはボルダーで高地トレーニングもして、この時期は朝から晩まで走ることを考えていました。「今年の抱負は?」って聞かれたら「3時間15分を切ること!」みたいな(笑)。速くなるためには何でもしました。
そんなとき北海道マラソンに出たんです。2週間くらいポートランドで練習して、5km19分台で走れていたので、これは確実に3時間15分を切れる、と確信していました。ところが結果は救急車で運ばれてリタイア。10kmですごく汗をかきはじめて、15kmで視界が黄色くなって、しゃがんだまま動けなくなったんです。北海道の夏を甘くみて、暑さ対策どころか帽子もかぶっていなかった。病院で点滴を打ちながら、こんなに頑張って、練習積んできて、なんで最後の最後でこれなんだろう。もうマラソンなんてバカらしい。やめよう、って思ったんです。
タイムよりも、長く楽しく走り続けていくことが目標。
でも(谷川)真理さんに「長年やっていればタイムが出るほうが難しいし、うまくいかないのが当たり前。これで嫌にならずに続けてほしい」って言われて。そのときは「そうはいうけど、ありえない」って思いましたけど、やっぱり走ることが好きだし続けようって。
コーチが金(哲彦)さんに代わってから意識も変わりました。がむしゃらにやるのではなく、目標達成のために何が必要かを一緒に考えています。「毎日やらなくてもいいよ」って言ってくれるので、ポイント練習に万全の態勢で臨めるようなサイクルで調整しています。今も3時間台では走りたいと思っていますが、それよりも長く楽しく走り続けていくことが目標。これから年をとって、3時間台で走れない日が来るかもしれません。でもそのときに自分が決めた目標を達成できたらすごく嬉しいだろうし、そういう気持ちで走っていければいいと思っています。
【成功の秘訣】
自分に合った目標を設定する。
【失敗の教訓】
結果を追い求め過ぎない。