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競泳日本選手権では新記録が激減。
“高速水着”も禁止で実力勝負へ!
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakao Fujita
posted2010/04/28 10:30
日本選手権3日目、男子100m背泳ぎで古賀淳也が53秒49で2年連続2回目の優勝。今回の目標「入江君に勝ちたい」は達成したものの、レース直後2人で「遅いね」と言い合った
ある関係者が、こんなことを言っていた。
「ここから新しいスタートですね」
4月13日から18日まで東京・辰巳で行われた競泳日本選手権でのことだ。
その言葉のニュアンスにもあるように、今年の大会は、いつもとは異なる意味合いの中で行われた。一昨年、昨年と世界中の競泳界を席巻した高速水着が今シーズンから禁止になったのだ。
日本新記録の更新は昨年の20からわずか3つに減少。
新春からのいくつかの大会では、選手は新しい規定に基づいた水着で泳いだが、記録が伸びなかった。むしろ下回る傾向さえ出ており、高速水着の効果は大きかったということが明らかになっていた。こうした状況で迎えた日本選手権。競泳は、日本記録であれ自己記録であれ記録の更新を目標に泳ぐものだが、この2年間に出された記録はもはや参考にならない。よって、自分が新しい水着でどれだけ泳げるのか、実力的にどの位置にいるのかを計るための大会となった。
大会を通じて更新された日本記録は3つ。昨年の大会で20の日本新記録が出たことと比較すると大幅に減少したのだが、前述したように、単純にレベルが下がったとは言えない。
入江、寺川らの実力者が強さを発揮。北島も復調の兆しを。
その中で感じたのは「力のある選手がやはり勝つ」ということだった。
例えば男子背泳ぎ。北京五輪200m5位、昨年の世界選手権200m銀メダルの入江陵介と、世界選手権100m金メダルの古賀淳也が競り合い、50mと100mを古賀が制すれば、200mは入江が優勝を決めるという熱い戦いがあった。
平泳ぎでは、北島康介の後継者と目されてきた立石諒が、50m、200m、100mの3冠を達成。
その平泳ぎには、注目の北島康介が復帰を果たしている。最初の種目である50m予選でいきなり日本新をマークしたものの、決勝は立石に敗れ2位、続く200mでは4位。
「ちょっと、崖っぷちなところもあります」
と、危機感を吐露した。
だが最後の100m決勝。結果は2位だったものの、前半から積極的なレースで、「納得のいく泳ぎができました」と笑顔を見せた。練習を本格的に再開したのは昨秋のこと。練習を積み上げることで自信をつかみ大会に臨んでいくスタイルが変わっていないのであれば、今回の結果はまだまだ練習量が足りなかったということか。本来なら、大会期間中に自らの不調を立て直していくところに北島の真骨頂があったのだが。
北京五輪バタフライ200m銅メダルの松田丈志も、同種目のほか、自由形の200m、400mで優勝し、存在感を示した。
女子は、北京五輪代表の上田春佳が自由形200m、100mを制し、100mでは自己ベストを更新。やはり五輪組の実力を見せた。アテネ五輪代表の寺川綾が背泳ぎで3冠を成し遂げたことも注目に値するだろう。