Jリーグ観察記BACK NUMBER
ブンデス専属スカウト川田尚弘が説く、
海外で活躍できる日本人選手の条件。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byShinya Kizaki
posted2012/01/28 08:02
川田尚弘氏は、筑波大学大学院コーチ学修士課程修了後にドイツ国立ケルン体育大学に入学。卒業後、ボルシアMGのユースコーチを務め、2010年末に帰国した。ドイツサッカー協会公認A級ライセンスとUEFA公認Aライセンスを持ち、今年から本格的に日本でスカウティング活動を行なう予定だという
日本人選手をスカウトする際の3つのポイントとは?
では、どんな点に注目して、スカウトを行うのか?
川田は3つのポイントを挙げた。
「プロサッカー選手に必要とされる高い基礎能力や、ポジションの特徴が前提条件にあるとして、ハノーファーとしては特に、『チームの中で、もしくは、チームのためにどのようなプレーができるか』、『高いモチベーション、そして何かを学ぼう・自ら獲得しようとする意欲があるか』、『豊富な運動量』という点を重視しています」
こういうクラブとしての方針に加えて、川田は個人的にあるポイントに注目するようにしているという。
メンタルの強さと個性に加えて、“武器”が必要。
「ヨーロッパのサッカー界で生き残って行くには、やっぱり武器がないといけない。みんな個性があり、我が強いんで、その中にマッチするという柔軟性は大事ですけど、『あいつにはこんな武器がある』というのを見せられないと厳しい。もちろんポジションにもよりますけど、例えば、ディフェンシブな選手だったら『1対1が強い』、『ヘディングが強い』、オフェンシブな選手だったら、『スピードがある』、『プレッシャーの中で高い技術を発揮できる』、『フリーランの質』、といったことを見る。僕自身はそういう武器を大切にして、クラブに報告するようにしています」
川田がボルシアMGユースを指導していたとき、GKマルク=アンドレ・テア・シュテゲン、DFトニー・ヤンチュケ、MFパトリック・ヘアマンなど、チームにはドイツU-19代表選手がたくさんいた。その後、彼らはトップチームに昇格して主力になり、今年1月20日のバイエルン戦では3人とも先発し、3対1の勝利に貢献した。
彼らを見て、川田は武器の大切さを目の当たりにしたのだと言う。
「ドイツの人たちは、日本人以上にメンタリティーやキャラクターを大事にします。それプラス武器があるかどうか。マルク(アンドレ)は左右の足で正確に蹴れましたし、1対1やハイボールにも強く、反応も速い。チームを鼓舞するメンタリティーも持っていた。また、パトリックは抜群に速かったし、得点も多くとっていた」
練習ではスネ当てが割れるシーンを何度も目撃し、ビブスが破れるのは当たり前だった。そういう激しい競争を勝ち上がって行くには、他の選手にはない自分だけの特別な武器を見せつける必要がある。