野球善哉BACK NUMBER
楽天・田中将大と広島・前田健太。
邂逅の日を待ちわびる2人のエース。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/01/05 10:30
ふたりの沢村賞受賞コメントは以下の通り。「まだまだ歴代の方、現役でやっている沢村賞をとった方に実力的に及ばないと思う」(前田健太・写真左)。「僕の中では、投手のタイトルで一番大きい物はこの『沢村賞』と捉えていました」(田中将大)
新人王に輝いた田中と、ファーム暮らしに甘んじた前田。
セとパに分かれたプロでの2人の差は1年目に大きく開いた。田中は28試合に登板し、11勝を挙げ、新人王を獲得。前田は、当時の指揮官マーティー・ブラウンの方針もあり、1軍での登板はなし。
相手を意識していたのは離された前田の方である。当時の、田中へのライバル視をこう回想していたことがあった。
「同世代の一番のピッチャーだったんで、勝ちたいというのもあるし、いつかは一緒に争えたらいいな、と。僕の方が勝手に『ライバル』って思っていましたけど、言うのも恥ずかしいくらい実績は離れた感じでした。『勝ちたい』『争いたい』と言えるほどではなかった。だから、1年目は悔しかったですね」
前田が沢村賞を獲得すると、翌年には田中が追いついた。
前田からしてみれば、'10年の活躍でようやく対等に戦える位置に来たというのが、正直なところだろう。沢村賞を田中より先に取ったことは、後を追う意味でも大きかった。
前田はこうも話していた。
「沢村賞は取れると思っていなかった。だから、自分が田中に勝っているとは思っていなかった。けど、ライバルって言える立場くらいにはなってきたかなというのはある。'11年こそ対戦したいですね」
結局その'11年も、田中と前田の対戦は実現しなかったわけだが、その代わり、今度は田中が沢村賞を獲得した。
前田が獲った賞を翌年に田中が奪ったのだから……このせめぎ合い、たまらなく面白い。
優勝という同じ目標を抱く2人の対決はいつの日か?
来年の前田がどのような想いでシーズンを迎えるのか。想像しただけでも楽しみでならない。
奇しくも、契約更改の席で2人は似たようなことを口にしている。
「個人とチーム、2つそろって良い成績を収めないと心の底から喜べない」(田中)
「来年は自分の成績だけではなく、チームをCSや優勝へ導ける投手になりたい」(前田)
優勝を争う中での2人の対決。時は刻一刻と迫ってきている。