スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
クラブW杯制覇の大きすぎた代償。
EURO出場も危ぶまれるビジャの現在。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byMiki Sano
posted2011/12/28 10:30
「頑張れ!グアヘ(ビジャの愛称)」と書かれたTシャツでCWC決勝のピッチに入場したバルサイレブン
古巣バレンシアの選手までもが激励のメッセージを。
ビジャ負傷に揺れたのはバルセロナ関係者だけではない。
彼が17~21歳までプレーした地元クラブ、スポルティング・ヒホンのファンは17日に行われたエスパニョール戦にて、ビジャの背番号7にちなんで前半7分に定番コール「イジャイジャイジャ!ビジャ、マラビジャ!(ビジャは素晴らしい)」を叫んで地元の英雄にエールを送った。
一昨季まで5年間所属した古巣バレンシアの選手達は、18日に行われたマラガ戦の入場時に「ANIM GUAJE(がんばれグアヘの意。グアヘはビジャの愛称)」と書かれたユニフォームを着て入場し、やはり激励のメッセージを送っている。
「アニモ(がんばれ)ビジャ!」(ムンド・デポルティーボ紙)、「悲しみのファイナリスト」(スポルト紙)と一面で伝えたカタルーニャのスポーツ紙をはじめ、マルカ紙、アス紙らマドリー系メディアも「EURO出場に黄信号」とビジャの負傷を大ニュースとして伝えた。まさに国内ではバルサの決勝進出など全くの二の次だった。
ビジャ離脱の影響はバルサよりスペイン代表にあり。
ビジャに世界一のタイトルを。そんな思いを込め、サントスとの決勝でバルサの選手達は胸に「MUCHA FUERZA GUAJE」、背中に「がんばれ GUAJE」と書かれた青いTシャツをまとい、横浜国際競技場のピッチに立った。
結果は既知の通り。それもアレクシス・サンチェス、ペドロ・ロドリゲスらメッシ以外のFWは1人も先発起用せず、MFとDFだけのメンバー構成で71%という圧倒的なボール支配率を保っての圧勝だった。サッカー王国ブラジルの選手達に「今日はサッカーを学ばせてもらった」と言わしめた勝利は、言ってしまえばビジャ不在の影響を全く感じさせない内容だった。
しかし、6月にEURO2012を控えるスペイン代表にとっては大問題。ビジャは替えのきかないエースストライカーなのだ。今季はフェルナンド・トーレスが絶不調。現状では3番手の立場にあるフェルナンド・ジョレンテも、膝の痛みを抱えながらのプレーで動きが重く、昨季終盤より好調を維持していたアルバロ・ネグレドも最近までケガで戦列を離れていた。
他のFWが揃って不調の現在、唯一コンスタントにゴールを決めつづけてきたビジャの離脱は本当に痛い。それは「最悪のニュースだ。一番の犠牲者はケガした本人だが、当然EUROに向けてもこの上なく悪いニュースだ」というビセンテ・デルボスケ監督のコメントにも表れている。