フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
浅田匡子さんに届けと渾身の滑り。
GPファイナルの日本勢、各々の想い。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byYusuke Nakanishi/AFLO SPORT
posted2011/12/12 13:50
2位となった高橋大輔は、「(浅田選手は)お母さんを大好きだった。今後どういうふうに向き合っていくのかがすごく心配です」と語った
「一人でいるより仲間たちと一緒にいたほうが」(高橋)
男子は、高橋大輔がSPでコンビネーションジャンプを抜かすという大きな失敗をし、6人中5位からのスタートとなった。だがフリーでは、4回転こそ手をついたものの、残りをノーミスで滑りきった。ブルースのけだるいリズムに身を任せて、情緒たっぷりに魅せてケベックシティの観客からスタンディングオベーションを得た。
「これ以上は下がることはないと思って、フリーはリラックスして思い切り楽しみながら滑ることができました」
浅田真央のことに質問がおよぶと、「当人でなくては気持ちはわからない。次に会ったときにどのような言葉をかけてあげればいいのだろうかと悩んでいます。でも一人でいるより、仲間たちと一緒にいたほうがいい。試合には絶対に戻ってきてほしい。お母さんも、スケートが好きな人だった」と、日本チームのリーダー格らしい思いやりにあふれた言葉を口にした。
優勝したP・チャンよりも輝いていた、高橋大輔のフリー演技。
高橋は、フリー、総合ともに2位だった。
だが少なくともこの日のフリーに関しては、彼の演技は1位に値したのではないかと思う。
優勝したパトリック・チャンは、4回転を2回降りたが、どちらも着氷が乱れた。そして最後の3ルッツで転倒している。もともとチャンは、失敗しても立ち直りのうまい選手ではある。だがこの日のミスの入り方では、普段の彼の優れたスケーティングの持ち味が生かされず、全体の流れも途切れ気味であった。
解説者として会場に来ていた佐野稔氏は、「後半に入ってからの3ルッツ+1ループ+3サルコウが大きかった。普段やっていない3フリップ+3トウループも急遽入れた。この採点方式での勝ち方を知っている」と分析する。
だがあれだけのミスにもかかわらず、5コンポーネンツもわずかながら今回の高橋よりも高かったというのは、よくわからない。ジャンプミスはスケーティング技術には影響がなくても、5項目のうちパフォーマンスやインタプリテーションの部分では影響があるはずだ。