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バンクーバー五輪で感動はしたが、大会運営を過去と比較すると……。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNaoya Sanuki/JMPA
posted2010/03/06 00:00
バンクーバー五輪で感動はしたが、大会運営を過去と比較すると……。
堅いお国柄のカナダ。ボランティアに怒られた!
昨今、オリンピックではボランティアの能力が問われる。北京では、英語を話すことができる学生を中国全土から集めたのではないか? と思うほど大量の学生ボランティアがそこかしこに立っていた。「世界を見るチャンスだから」といったまっとうな理由から、「就職活動に有利だから」という現実的な理由まで含めて様々な理由で彼らは協力していたようだが、とにかく人海戦術で乗り切った印象がある。
バンクーバーでは学生、そして退職した「シニア・シチズン」が目立った。とにかく品がよい。ただ、融通がきかない。これが困ったもの。
たとえば、カーリング会場で試合前の選手が暇そうにしている時にフラッシュを焚いて撮影していたところ、「それはいけません」とすぐさま注意がきた。
私からすれば、「それは違うでしょう」と逆にツッコミを入れたいくらいなのだ。フラッシュは選手のプレーの集中力を妨げるものではあるが、試合に関係のない時間帯には問題が無いはず。要は規則がなぜ作られたかという本質を見ず、官僚的な対応になってしまっていたわけだが、そのことはちょっと残念だった。
聞けばメディアバスでの乗り換えで、乗ったバスが1分遅れたのに乗り継ぎのバスがそれを待たずに発車したことが多かったという。
これはバンクーバーの組織委員会のプレッシャーの表れだろう。そつなく運営することに気を取られ、大切なことを見失っている気がした。
全般的にはちょっと堅い感じのする大会ではあったのだ。
もうちょっと愛嬌があっても良かったかも、バンクーバー。
それでも街の雰囲気は楽しかった。アイスホッケーのカナダ戦では、カナダがゴールを決めるたび、街中から地鳴りのような歓声が起きるのだ。みんな家で見ていて、ゴールの瞬間、騒ぐのだ。こうした自然発生的なものが、オリンピックの空気を構成する一部になる。
今回のオリンピックは、ウィンタースポーツ大好き国民による、生真面目な大会だった。
もうちょっと愛嬌があっても良かったんだよ、バンクーバーのみなさん。