荒川祐輔メジャー挑戦記BACK NUMBER
僕が戦うマイナーリーグ。
text by
荒川祐輔Yusuke Arakawa
photograph byYusuke Arakawa
posted2004/09/16 00:00
今回のテーマは、「マイナーの仕組み・レベル」についてお伝えしたいと思います。
皆さん、メジャーの下にはどれだけのレベルがあり、段階があると思いますか? 多分ほとんどの方は、ルーキー・A(シングルA)・AA(ダブルA)・AAA(トリプルA)だけと思っているのではないでしょうか。僕も実際アメリカで野球を経験するまで、そうだと思っていました。しかし、実際は、ルーキー・ショートシーズン・LOW A(ローA)・HIGH A(ハイA)・AA・AAAというようになっています。つまり、だいたいどこのメジャー球団も6つほどのマイナー球団を持っているのです。日本的な考えでいったら7軍まであるということですかね。当たり前ですが、上に上がるにつれてレベルの高い野球をしています。
では、選手はいったいどれくらいいると思いますか? 一つのチームで選手登録できる人数が25名と決まっているため、単純に数えても一つの球団が持っている選手はマイナーの選手だけでも150人はいます。またその他に怪我をしている選手もいるので、全部で170人ぐらいの選手がマイナーにはいる計算になります。その中からメジャーのロースター(ベンチ)に入れるのは25名。いかに競争の厳しい世界かということが分かってもらえると思います。
メジャーに上がるまでには、レベルごとに年間140試合ぐらいをリーグ戦で戦います。しかし、ルーキーとショートシーズンは年間70試合ぐらいです。リーグ戦中に、そのレベルで良い成績を残すと、コールドアップ(昇格)されシーズンの途中にかかわらず上のレベルに上がります。またその反対に、結果が出せない選手はシーズン中にかかわらず下のレベルに落とされたり、リリース(解雇)されたりしてしまいます。日本はシーズンの途中でリリースというのはないですが、アメリカは頻繁にリリースがあり、反面、次の日には新しい選手が来るという感じです。
僕が今所属しているのはHIGH Aで、日本でいったら4軍です。ここHIGH Aのレベルは、日本野球でいったらどのぐらいなんでしょうか。僕は、日本のプロを経験していないので、プロの二軍選手のレベルがわからないですが、社会人野球より少しレベルが高いくらいではないかと感じます。ここでやっている選手が一・二年すればメジャーでプレーすると言われているぐらいですから。プロになって三、四年やってきている選手を中心に、集まってくるのがHIGH Aなのです。自分がこのレベルで思うことは、甘いファーストボール(ストレート)は上位打線、下位打線に関係なくホームランを打てる力を持っている打者がそろっているということです。カウントがボール先行になって投手不利の場合、ファーストボールでストライクを取りに行こうと真ん中に投げてしまうと、間違いなく大きいのを打たれてしまいます。投手に関しても、変化球をコントロールよく投げられる投手が、下のレベルより多いと感じます。つまり、レベルが上がるにつれてファーストボールだけでは通用しなくなってきてしまいます。これは日本でも同じことです。もっとも、コンスタントに95マイル(約151キロ)以上投げられる投手は、ファーストボール中心の攻めができますが、そんな投手は、一チームに一人か二人ぐらいしかいませんからね。
アメリカはファーストボールが重要と言われていますが、変化球もそれと同じぐらいに重要だと僕は思います。あとは、いかに低めに投げられることができるかですね。
これから、メジャーに上がるまでにはAA・AAAという段階があり、どんなレベルか、自分は経験したことがないので分かりませんが、一日でも早くそのレベルでプレーができるように、日々自分のできることをしていくしかありません。