ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
好発進のヴォルフスブルク、
死角はないのか。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2009/08/20 11:30
アルジェリア代表のジアニ。今季マルセイユから移籍してきたテクニシャンだ
開幕戦は、どのチームにとっても難しいものだ。8月7日に開幕したブンデスリーガでは、9試合中で4試合が引き分けで、4試合が1点差での決着がつく接戦となった。そんな中、ヴォルフスブルクは2-0で昨シーズンを3位で終えた強豪シュツットガルトを下した。
この試合で、アシスト王のミシモビッチは相手のマークを外してボールを受けると、左足で狙いすましたシュートを決めた。得点王のグラフィッチは緩急をつけたドリブルでDFを置き去りにして、追加点を奪ってみせた。
「ミシモビッチが決めたゴールは素晴らしかった。もちろん、グラフィッチのプレーも際立っていたね」
新監督のアルミン・フェーは試合後に笑顔を見せて、彼らの個人技をたたえていた。
出足から躓くライバルを尻目に、攻守ともに堅調だが……。
守備陣についてはどうか。昨シーズン、DFとしてブンデスリーガ史上最高額の移籍金でやってきたイタリア人のバルザーリは、この試合で相手に振りきられそうになってもスライディングで足を伸ばし、シュートをブロックしていた。昨年度のスイス年間最優秀選手にも選ばれたGKベナーリオは、194cmの恵まれた体躯と驚異的な瞬発力で決定的なシュートを防いでみせた。攻撃陣だけでなく、守備陣も個の能力の高さを見せつけていた。
ダントツの優勝候補であるバイエルンは、ホッフェンハイムの猛攻を受けるなど苦戦を強いられて開幕戦では引き分け。ベッケンバウアーが優勝候補に挙げたハンブルガーSVは、昇格してきたばかりのフライブルクと引き分けるありさまだ。ライバルが出足からつまずいていることを考えても、ヴォルフスブルクの歩みは順調であるかに見える。
システムの機能不全につながりかねない“微妙なズレ”。
だが、本当にそうだろうか。はじめて参加するチャンピオンズリーグ(CL)を前に不安は募る。
フェー新監督が採用するフォーメーションは昨季と同じ。中盤をダイヤモンド型にした4-4-2だ。昨シーズンの最終戦と今シーズンの開幕戦とでメンバーが代わったのは右MFのポジションだけ。負傷している長谷部にかわって新加入のジアニがプレーした。ただ、ジアニの存在が微妙なズレをチームにもたらしているのだ。ジアニは攻撃力に定評のある選手で、守備力には不安が残る。
そもそも昨シーズンのヴォルフスブルクでは、左サイドが攻撃の中心だった。攻撃力が売りの左MFゲントナーと左SBシェファーとのドイツ代表コンビが攻め上がれるように、右サイドにはしっかりと守備の出来る選手が起用され、バランスをとっていた。
だが、右MFのジアニと左MFのゲントナーが同時にピッチに立つとバランスが上手く取れない。どちらも前に出ていく。中盤の守備は手薄になり、CBやGKがその割りを食って危険にさらされる場面が増える。チーム力を高めるはずのジアニの存在が、現状では生きていない。