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ファンハールを悩ますバイエルンの宝。
~リベリー騒動がチームを壊す~ 

text by

ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byGetty Images

posted2009/07/23 11:30

ファンハールを悩ますバイエルンの宝。~リベリー騒動がチームを壊す~<Number Web> photograph by Getty Images

アヤックス、バルセロナでの栄光に続き、昨季はAZを率い、オランダ1部を制覇。ファンハールは間違いなく現代の名将の一人だ

 “Van Gaal”ではなくて、“Fun Gaal”。

 独『キッカー』誌の表紙を飾ったバイエルン・ミュンヘンの新監督のルイス・ファンハール(Louis Van Gaal)の写真の横には、“Fun”という文字が躍っていた。ファンハールが率いることになったバイエルンへの期待と注目度は高い。しかし、チームの先行きはまだ不透明だ。

 7月18日に行なわれたハンブルガーSV(以下、HSV)との練習試合で見せた戦いぶりは、不甲斐なかった。HSVが昨季までの戦い方を継続させようとしていたため、対照的に、特に攻撃面でのバイエルンの選手たちのコンビネーション不足が目立っていた。

 ただ、3500万ユーロというブンデスリーガ史上最高額で移籍したドイツ代表FWのマリオ・ゴメスの動きを、チームとして活かそうとするところに展望は見出せそうだ。身長が189cmある彼の真骨頂は、高さを生かしたプレーよりも、相手ディフェンスラインとの駆け引きとボールのもらい方にある(昨季、彼が1試合あたりにとられたオフサイドの数はリーグ3位。それだけDFラインの裏をとろうとしているということだ)。

 他のチームから新しくやってきた選手が7人もいて、監督も代わった。現在のチームの状態は、可もなく不可もなくといったところだ。

核となるリベリーの去就が決まらず戦術が定まらない!

 ここまでファンハールが一貫して採用しているシステムは4-4-2だ。中盤をダイヤモンド型にするか、ボランチを縦に並べて4-1-3-2のような形にするかは定まっていないが。「本当は4-3-3を試したいのではないか」と問うドイツメディアに、「フランク・リベリーが活きる形を考えて、このようなシステムにしている」とファンハールは語っている。

 そのリベリーが問題なのである。

 リベリーの目は、マドリードに向いていて、ファンハールも「彼がレアル・マドリーに移籍したがっているのは確か」と認めている。もっともリベリーは公には「ボクは退団したいなどとは言ってない」とコメントしてはいるが、どちらが真実かは明らかだろう。

 この騒動を収めるため、バイエルンは7月16日までに8000万ユーロの違約金を払うクラブがなければ、移籍交渉をしないと発表していた。そんなクラブは現れなかった。

「移籍をめぐる問題は解決した」と一方的に主張するバイエルン。だが、真に受けるものはほとんどいない。リベリー自身の口から「残留」が語られない限りは。

R・マドリーより多いバイエルンの商業収入は世界最高だが……。

 リベリーを簡単に手放せないのは、彼がマーケンティング面でもチームに貢献しているからだ。チームに加わってからユニフォームの売り上げが急速に伸びており、中でもリベリーのユニフォームの売り上げはチームでも1、2位を争う。

 さらに、全収入のうちで放映権収入と入場料収入を除いた商業収入(スポンサーからの収入やグッズ売り上げなど)だけを見てみると――。バイエルンの商業収入は、2位のレアル・マドリーよりも多く、世界最高なのだ。チームの顔となるリベリーがレアル・マドリーへ移籍してしまったら……。リベリーをめぐる問題には、そんなビジネスの側面も潜んでいる。

【次ページ】 ファンハール改革は、まずチームのスリム化から始まった。

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