佐藤琢磨 グランプリに挑むBACK NUMBER
5位入賞がもたらすもの
text by
西山平夫Hirao Nishiyama
photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)
posted2005/04/27 00:00
「楽しかったですよ!」
コクピットを降りて来た佐藤琢磨の第一声がこれだった。久しぶりに聞く満足そうなコメントは、5位とはいえこのサンマリノ・グランプリが収穫多い一戦だったことを物語る。
収穫は金曜日午前中の試走から日曜日のチェッカーまでの走行時間帯でマシン・トラブルが出なかったことが基礎になっている。琢磨本人は熱病で出られなかったマレーシアも含めBARホンダが開幕3戦延べ6台を走らせてまったく結果が出なかったのは、ひとえにマシン・トラブルが多発したからである。
「完走しました、ついに。バーレーンの後2週間のテストをミッチリやって、その結果がこういう形で表れて嬉しいですね。ダブル入賞で、今シーズン初のチェッカー・フラッグ受けたのですが、トラブルフリーで週末を迎えられたのが大きかったし、バーレーンでレースの楽しさっていうか勘を取り戻して、いい感じでイモーラに入れたのが結果につながった。完走することが大事なんですよ」
もともとBARホンダ007の潜在ポテンシャルは高いと言われていた。しかし、信頼耐久性の面で不安を抱くエンジンは規定の2グランプリを走り切ったことがなく、加えて空力面の不安定もあってここまで3戦レースらしいレースが出来ずじまい。
今年は1レースの不振を払拭するのに2レースかかる。前戦バーレーンでの琢磨はレース前半にリタイア。それが響いてサンマリノでの1回目予選の出走順位は8番目。予選ではマシンが走れば走るほどレコードラインがきれいになるが、8番目くらいではまだ路面コンディションが安定せず好タイムは望めない。1回目の琢磨は果たして10位。2回目予選でも似たような状況だったが、それを6位に押し上げたのは琢磨の思い切り大胆なドライビングの結果。そこから出走して5位だったのだから、もっと上位を望もうとすれば1回目予選の出走順位を上げるしかない。1レースの不振を挽回するのに2レースかかるというのはそういう意味である。
サンマリノの5位で表彰台のチャンスが出て来た。このレースの4位は怪我で不出場のモントーヤの代役ブルツ。もし次戦スペインでモントーヤが帰って来ると1回目の出走はいちばん最初。琢磨は17番目の出走順位となる。ようやくチャンスが巡って来たわけだ。
もっとも好結果が即そのまま好結果につながるほど甘くもなく、その可能性を大いに高めたというだけだ。ここからはマシン、ドライバー、そしてチームの真の実力が問われる。
ルノーは開幕4連勝を飾り、敗れたとはいえフェラーリも復活して来た。マクラーレンはライコネンがポールポジションを獲り、ブルツのペースは琢磨を上回っていた。しかも今回ホンダは新しいエンジンに換えたから、スペインは2レース目。ライバル・チームはフレッシュ・エンジンに換装して来る。それでもそれらライバルをようやくキャッチアップする土台が出来たことで、今後のシリーズの展開に大いなる希望が出て来た。
「もうこうなったらここからは2005年の自己ベスト更新が目標でしょうね。次は今回の5位を上回って行きたい。予選もきっといい位置で行けるし、ウン、楽しみです」
やっと佐藤琢磨の片目が開いた。