北京をつかめBACK NUMBER
柴田が世界競泳で目指すもの。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakuya Sugiyama
posted2007/08/20 00:00
8月21日から、「世界競泳2007」が千葉県習志野市で開幕する。これまでは夏に行われていた世界選手権が今年は3月に開催され、夏の国際大会がなくなったために、新設された大会である。
中国と日本の気候が比較的似通っていると思われることから、プレ五輪大会の意味合いもあり、海外の一流選手も参加する。
3月のメルボルン世界選手権で見えたのは、世界の予想以上のレベルアップであった。それは、2004年のアテネ五輪で金メダル3、銀1、銅4と、史上最高の成績を残した日本競泳陣にとって、北京五輪での厳しい戦いを想像させるものだった。それだけに、世界競泳2007は、世界との距離を縮めることができるか、重要な場になる。
その中に、柴田亜衣もいる。
柴田は、アテネ五輪自由形800mで金メダルを獲得。これは、日本女子自由形では史上初の快挙だった。
以後、'05年モントリオール世界選手権では400mで銀、800mで銅。今年3月のメルボルンでも400、1500mで銅メダルを獲得するなど、自由形中長距離では押しも押されぬ存在となった。
その柴田の主戦場である400mと800mもアテネ以降、世界のレベルアップが著しい。
今季のランキングで見ると、400mでは、'06年に4分02秒61の世界記録を樹立したマナドゥ(フランス)が4分02秒61で世界ランキング1位。2位にイエジェイチャク(ポーランド)が4分04秒23で続き、3位と4位には、アメリカの伸び盛りの十代コンビ、ジーグラーとホフが4分04秒24、4分04秒60で続く。柴田は4分05秒19(日本記録)の5位である。
800mでもジーグラーの8分18秒52、マナドゥの8分18秒80などに対し、柴田は8分26秒60で7位にとどまっている(自己記録はアテネ五輪の8分24秒54)。
北京五輪で再びメダルを目指す柴田にとって、だからこそ、この大会にかける意気込みは強い。
「北京の足がかりにするためにも、ここで目標とするタイムを出したいです。ふつうに考えると、今の私はあの人たちにはおよばないからこそ、タイムを出すことが大切なんです」
目標とするタイムは、「400mは4分04秒か03秒、800mは8分20秒を切って、8分18秒か19秒まで行ければ、と思います。21秒台は許せないです。18秒か19秒まで伸ばせれば、目標にしているジャネット・エバンスの世界記録(8分16秒22)更新も見えてきます」
6月には、「北京を最後に引退の意向」を持っていると伝えられた。
その真意を尋ねると、柴田はこう言った。
「はい、北京でやめるつもりでがんばります」
そしてこう続けた。
「アテネのときもそう言っていたのでどうなるかわかりませんが……終わってみて、ほんとうに満足したらやめると思うし、そのときになってみないとわからないですけど。とにかく目の前のことを、と思っています」
400mは21日、800mは24日。柴田の北京へ向けた戦いが始まる。