プレミアリーグの時間BACK NUMBER
5年ぶりに“ビッグ4”の牙城を崩す?
堅守を誇る古豪アストンビラに注目!
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAction Images/AFLO
posted2009/11/03 08:00
得点を重ねている超快速FWアグボンラホール(右)。アシュリー・ヤング(左)らと絶妙なコンビネーションを見せる
“ビッグ4”によるトップ4独占が続くプレミアリーグ。マンU、チェルシー、アーセナル、リバプールの4強以外が4位以内に収まった最近の例は、5シーズン前のエバートンまで遡らなければならない。
しかし、今シーズンはトップ4入りに現実味を感じさせるチームが存在する。オイルマネーに物を言わせて大型補強を行ったマンチェスター・シティではない。「4位狙い」を公言し、実際開幕から好調なトッテナムでもなく、2年連続5位の実績を持つエバートンでもない。マーティン・オニールが監督に就任した3年前から、地道に上位を目指してきたアストンビラのことだ。
クラブ史上、過去10年で最高の開幕ダッシュを見せているミッドランド(英国中部)の古豪からは、優勝争いには絡めずとも先頭集団での完走は可能と思わせる「しぶとさ」が感じられるのだ。
総入れ替えしたDF4人の守備力がチームを支える。
以前との最大の差は守備力アップに伴う安定性だろう。昨シーズンまでのアストンビラは、オニール自身が「前は良いが後ろが不安」と語るチームだった。前線では、アシュリー・ヤング(写真左)、ガブリエル・アグボンラホール(写真右)、ジェイムズ・ミルナーの若き3トップが、「アーセナルに次ぐ美しさ」とまで評される流麗な攻撃を披露する一方、後方では「中位以下のレベル」と批判される失点数を記録してきた。昨シーズンは、1月の時点で3位につけておきながら、終盤の13試合で24失点を喫して6位に終わってしまった。
ところが今シーズンのアストンビラは、失点数をリーグ最少レベルに抑えて戦い続けている。
オニールが講じた策はバック4の総入れ替えだった。今シーズン、チームには4人の新DFが加入している。その4人のうち、右SBのハビブ・ベイこそベンチを暖めているが、リチャード・ダンとジェームズ・コリンズの両CBと、左SBのスティーブン・ウォーノックは、揃ってデビューを飾ったバーミンガム戦(9月13日)で零封勝利(1-0)を実現するや否や、不動のメンバーとなった。そして右SBには中央からカルロス・クエラーがコンバートされている。この新4バックは、「1本の糸で繋がれているかのように連動する」と国内各紙が絶賛する隙のない守りで、チームのポイント奪取に大きく貢献している。いわゆる大物はいないが、彼らはいずれもプレミアの水に慣れたDFだ。だからこそオニールは、バーミンガム戦前に「最終ラインの一新はギャンブルではない」と言い切れたのだ。