プレミアリーグの時間BACK NUMBER
5年ぶりに“ビッグ4”の牙城を崩す?
堅守を誇る古豪アストンビラに注目!
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAction Images/AFLO
posted2009/11/03 08:00
得点を重ねている超快速FWアグボンラホール(右)。アシュリー・ヤング(左)らと絶妙なコンビネーションを見せる
選手層は厚みを増し、チームプレーの精神も全員に浸透。
DF陣に対する周囲のサポートも忘れてはならない。毎年リーグ最高レベルのセーブ率を記録するベテランGK、ブラッド・フリーデルの好守もさることながら、目を見張るのは3センターからオーソドックスな4人体制に再編されたMF陣の献身だ。代表格は右サイドのミルナー。アップダウンを繰り返すウィンガーには、2-1で金星を挙げたチェルシー戦(10月17日)で監督が「驚異的」と感嘆の声を上げた。約50mを疾走して自軍ゴール前へのクロスをクリアした直後、敵陣内で逆サイドからのクロスをダイレクトで折り返し、あわや追加点というチャンスを演出した73分の一幕は、ミルナーのハードワークを示す一例でしかない。
オニールが昨シーズンまで「薄すぎる」と嘆いてきた選手層も、すでに問題のないレベルにある。リーグ戦9試合で5得点のアグボンラホールのパートナーは、ジョン・カリューとエミール・ヘスキーの両巨砲から選択できる。最終ラインの持ち駒も増え、中盤にはスピードもスタミナも抜群のファビアン・デルフという新たな若きタレントが加わった。そして全員がチームのために献身的にプレーする。オニールが「ビッグクラブばりのローテーションが可能になった」と胸を張るのもうなずける。
オニール監督の地道な改革が、4強という成果を挙げる。
一方、4強を目指すライバルたちはそれぞれ小さくない欠点を抱えている。トッテナムは10試合で14失点と堅守とは無縁の状況。エバートンは相変わらずの層の薄さと故障者の多さで大きく出遅れた。片や、急激な戦力アップを図ったマンCは、人員過多のFW陣が不協和音を生めば一気に自滅へと進む危険をはらむ。
マンCとの対戦(10月5日)で惜しくも引分けに終わった直後、アストンビラの“フォア・ザ・チーム”の精神を象徴するミルナーは言った。
「マンCが注目を浴びてくれるのは大歓迎。僕らは静かに、でも着実に4位を目指すよ」
昨シーズン終了時点では、自軍サポーターからも「進歩の跡が見られない」と不満の声が漏れていたアストンビラ。だが、オニールが3年間を掛けて作り上げてきたチームは、いよいよ、力強く前進し始めている。ウルブズに追いつかれて(1-1)4位浮上のチャンスを逃した9節での悔しさも、格下との対戦で終盤に慎重さを欠いた教訓として今後に生かされるはずだ。
“ビッグ4”の牙城切り崩しに向けた第2集団からの“昇格レース”は、成功を急ぐマンCのような「ウサギ」ではなく、アストンビラという名の「カメ」が勝者となるのではないだろうか。