MLB Column from USABACK NUMBER
レイズ黄金時代の到来?
text by
李啓充Kaechoong Lee
photograph byAFLO
posted2008/10/23 00:00
10月19日、レイズが、ア・リーグ選手権シリーズ最終戦でレッドソックスを下し、初のワールドシリーズ進出を決めた。昨年7月の本欄で、私は、「デビルレイズに明日はあるか?」と題するコラムを書いたが、当時から、MLB関係者の間では「デビルレイズはいずれ強くなる」と予測する向きがほとんどだった。コラムの中でも紹介したが、『スポーツ・イラストレイテッド』誌(昨年3月19日号)が、「大リーグ最強チーム、デビルレイズ」と銘打った2010年用の架空表紙を作成したのは、その好例である。
というわけで、レイズがいずれ強くなることは「想定内」の結果だったのだが、スポーツ・イラストレイテッド誌が作った架空表紙が2010年用であったことでもわかるように、強くなるにはまだ2,3年かかると思われていただけに、今年いきなり(少なくともア・リーグの)最強チームにのし上がったことは「想定外」のできごとだった。
大方の予想より早いスピードで最強チームの座に就くという想定外の結果を受けて、いま、当地では、「予想より早くなった分、強い時代が長く続く。レイズの黄金時代が始まった」とする説が唱えられるようになっている。というのも、メジャーでは、「選手の年齢的ピークは27―28歳」であることがデータで証明されており、レイズの主力選手は27歳以下の「伸び盛り」の選手がほとんどだからである。付表に、2009年の予想メンバーとその年齢を記したが、比較の対象として併記したヤンキースの「ロートル」ぶりと比べたとき、その違いは一目瞭然だろう。
〈2009年予想メンバーとその年齢〉
位置 | レイズ | 年齢 | ヤンキース | 年齢 |
---|---|---|---|---|
投 | デイビッド・プライス | 23 | C・C・サバシア | 28 |
投 | スコット・カズミア | 24 | A・J・バーネット | 31 |
投 | マット・ガーザ | 24 | 王建民 | 28 |
投 | アンディ・ソーナンスタイン | 25 | ジョバ・チェンバレン | 23 |
投 | ジェイムズ・シールズ | 26 | フィリップ・ヒューズ | 22 |
捕 | ディオナー・ナバロ | 24 | ホルヘ・ポサダ | 37 |
一 | カルロス・ペーニャ | 30 | マーク・テシェラ | 28 |
二 | 岩村明憲 | 29 | ロビンソン・カノー | 25 |
三 | エバン・ロンゴリア | 23 | アレックス・ロドリゲス | 33 |
遊 | ジェイソン・バートレット | 28 | デレク・ジーター | 34 |
左 | カール・クロフォード | 27 | ゼイビア・ネイディ | 29 |
中 | B・J・アプトン | 24 | ジョニー・デーモン | 34 |
右 | ロコ・ボルデリ | 27 | ボビー・アブレイユー | 34 |
指 | ウィリー・アイバー | 25 | 松井秀喜 | 34 |
(赤字は27歳以下の選手)
ちなみに、レイズとレッドソックスがリーグ選手権シリーズで死闘を繰り広げていた最中の10月16・17日、ヤンキースは、来季への巻き返しを図る補強戦略会議を開いた。その席で、最優先課題は投手と一塁の補強、C・C・サバシア、A・J・バーネット、マーク・テシェラ等、大物FAの獲得に全力を上げる方針が確認されたという(付表ではこの方針を反映させた)。
仮に、ヤンキースが、持ち前の財力に物を言わせて、大物FAを全員長期高額契約で獲得することに成功したとしても、年齢的には下り坂にさしかかることがわかっている選手ばかりであり、「アホウドリ」をつかまされない保証はない。伸び盛りの選手ばかりのレイズと比べたとき、「ヤンキースに明日はあるか?」と、真剣に心配せざるを得ない所以(ゆえん)である。