MLB Column from WestBACK NUMBER
岩村に見る、日本野球の強さの秘密
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byREUTERS/AFLO
posted2008/11/25 00:00
日米ともにストーブリーグに突入し、来シーズンに向け様々な動きが活発になっている。そんな中、来年3月に行われるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場する日本代表チームの首脳陣が一堂に会し、記者会見を開いた。原監督就任までの経緯についてNPBの対応に言いたいことは山ほどあるのだが、とにかく日本代表チームには頑張ってほしい気持ちで一杯だ。
だが、以前に「番外編」で触れているように、日本は連覇どころか、予選突破すら難しい状況だ。手探り状態だった第1回大会と違い、各国代表チームの“本気”度は比べものにならない。さらに第1回大会では慎重な姿勢をみせていたスター選手たちも、第2回大会の出場に積極的な姿勢をみせている。第1ラウンドで戦う韓国や台湾でさえも、メジャー選手中心のチーム構成になるのは間違いなく、五輪予選以上に厳しい戦いになるはずだ。
悲観すればきりがないが、一方で日本代表チームに今まで以上の期待を感じているのは確かだ。今シーズン岩村明憲選手を追っていて、メジャー球界の中でも光を放つ日本人選手の“野球IQ”の高さを実感することができたからなのだ。
いうまでもなく、今シーズンの岩村選手はずっと不動の一番打者としてチームを牽引してきた。巷間言われる理想的な一番打者は、打率はともかく出塁率が高く、足の速く盗塁が狙える選手ということで問題ないだろう。それを踏まえた上で、次の成績をみてほしい。
●岩村選手
打率:.274、出塁率:.349、盗塁数:8、四球数:70
●アップトン選手
打率:.273、出塁率:.383、盗塁数:44、四球数:97
今シーズン主に2番打者を務めたアップトン選手と岩村選手の今シーズンの成績だが、成績だけを単純比較すると間違いなくアップトン選手の方が一番打者向きだといえる。しかし今シーズンの最優秀監督賞に輝いたマドン監督は確信を持って岩村選手を使い続けた。それを裏付ける端的な理由が、9月19日のツインズ戦での出来事だった。
チームは史上初のプレーオフ進出を目前にしていた。しかしながら前日は8点を奪いながら逆転負け。決していいムードではなかった。そんな状況下で迎えた第1打席に、岩村選手は左翼方向の打球を放った。文句なしの2塁打の当たりではあったが、岩村選手はやや強引とも思える走塁で三塁へ。結局次打者の内野ゴロで先制点のホームを踏んだが、続く3〜5番に連打が飛び出し、この回3得点。結果だけみれば、危険な走塁は必要なかったようにも見える。しかし後日岩村選手の説明を聞き、「なるほど」と感心するしかなかった。