MLB Column from WestBACK NUMBER
岩村に見る、日本野球の強さの秘密
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byREUTERS/AFLO
posted2008/11/25 00:00
「昨日の負けもあるし、絶対に先取点がほしかった。あの場面どうしても3塁にいきたかった。無死2塁なら内野ゴロ→フライで得点になるが、最近うちはフライ→内野ゴロでチャンスを潰していた。確実に点を取るためにも無死3塁にしておきたかった」
確かに3連打も岩村選手の先取点の後に生まれたもの。岩村選手としては、最近のチーム状況をも考えての走塁だった。そして思い通りに先取点を奪うことに成功し、チームも11対1と大勝。再び勢いを取り戻したレイズは、翌日にプレーオフ進出を決めている。
今シーズンの岩村選手は、このような的確な状況判断を常に行ってきた。さらに監督の采配に疑問を持てば、監督室のドアを叩き氷解するまで話し合った。今シーズン岩村選手は「個人成績なんてクソ食らえ!チームが勝てば何だっていい」という言葉を繰り返してきたが、その頭の中は「監督ならどうしたいのか?」「チームが勝つために自分がすべきことは?」という考えで一杯だったように思う。
また昨シーズンは早打ちが多かった岩村選手に対して首脳陣は「後続打者のためにもじっくり球をみてほしい」という指示を出していたが、その期待通りメジャー全選手の中でサイズモア選手(インディアンズ)、アブレイユ選手(ヤンキース)に続き、投手に球数を投げさせている。今シーズン怠慢走塁で2度の出場停止処分を受け、たびたび凡ミスを犯したアップトン選手とでは、マドン監督の信頼が岩村選手に向かってしまうのも、まさに必然といっていいだろう。
岩村選手に限らず、日本選手は幼い頃から基本練習のみならず戦術面でも相当な教育を受けている。個人的身体能力の高い選手で溢れかえっているメジャーでも、誰もが高い野球IQを持っているというのは日本人選手ぐらいしかいないだろう。
野球は点をとらなければならない競技だが、得点する方法は様々だ。そういった面での“緻密さ”を選手自身が持っている点で、日本は世界最高峰にあると思う。北京五輪の時とは違い、代表チームがきちんとチームとして機能すれば十分に戦えると信じている。ただ、「メジャー指向」型の巨人監督である原監督の采配に一抹の不安を感じているのも確かなのだが……。それについては別の機会に回しておこう。