バンクーバー通信BACK NUMBER
トリノの借りをバンクーバーで返す!
メダルを狙う吉井小百合の本気度。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2010/02/17 18:45
満足そうな笑みと、先を見据える強い視線。
吉井小百合は、バンクーバー五輪での自身の最初の種目で好スタートを切った。
前日の15日、男子500mで長島圭一郎が2本目で今シーズン最高と言える滑りを見せて、6位から浮上し銀メダルを獲得。加藤条治も銅メダルに輝き、その勢いに続こうと、女子の500mに日本の選手たちは臨んだ。
日本からは、岡崎朋美、新谷志保美、吉井、小平奈緒の4人が出場したが、その中で健闘したのが吉井だった。
結果は5位だが攻めのレースに手応えあり。
中国の強豪選手、王北星(ワン・ベイシン)と同走となった1回目は、懸命に王に食らいつき、勝てはしなかったものの、0秒08の僅差でゴール。38秒56で6位につけた。
2回目はレース後半に伸びを見せ、1回目を上回る38秒43とタイムを伸ばす。上位選手も好走したため、結果は5位にとどまったが、十分力を発揮した1日となった。
吉井も、手ごたえをつかめたことを、率直に表した。
「満足です。気持ちのいい疲労です。集中できましたし、トリノ五輪と違って、攻めるレースができました」
この4年間の取り組みが間違いではなかったことを、確認できたかのようでもあった。
4年前のトリノ五輪で予想外の下位に沈んだ吉井。
吉井は4年前、ワールドカップなどの国際大会で活躍したことで、周囲から大きな期待を集めてトリノ五輪に挑んだ。本人も、「自信がありました」と振り返っている。
だが、結果は、500mが9位、1000mは15位と、予想もしない結果に終わる。
「いったい何がだめだったのか」
原因を探り、自らをどう立て直せばよいのか、自問自答の日々が始まった。
答えが、「短距離以外の種目への挑戦」だった。吉井がもともと得意とするのは500mだったが、一度、不得意な距離の長い種目にもチャレンジしてみようと考えたのだ。
「長い距離をやることで、持久力がつく。それは500mにも生きるはずだ」
そんな考えからだった。
その取り組みが生きたのが、今回の、後半に伸びるレースぶりだった。
加えて、これは男子500mの好成績にも共通することだが、トリノの不振をばねに、日本のスピードスケート界あげての取り組みも、吉井がトリノの二の舞を演じなかった理由にあげられる。