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オバマを窮地に追い込んだ、
レッドソックス・ファンの「怒り」。 

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李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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posted2010/02/03 10:30

オバマを窮地に追い込んだ、レッドソックス・ファンの「怒り」。<Number Web> photograph by Getty Images

選挙前の日曜日、マーサ・コークリー候補(左)の応援に駆けつけたオバマ大統領。手を振るが、心なしか表情が固い

地元のヒーローを「ヤンキース・ファン」と呼ぶとは……。

 しかし、「でも、カート・シリングも共和党候補を応援していますよ」と切り返したアナウンサーに対して、こともあろうに「シリングもヤンキース・ファンですから」とやってしまったのである。

 2004年、ヤンキース相手のリーグ選手権シリーズでソックスを血に染める快投でレッドソックスに逆転優勝をもたらしたヒーローを「ヤンキース・ファン」と決めつけたのだから、レッドソックス・ファンが呆れたのも無理はなかった。

 シリングが自身のホームページで「自分の州で何が起こっているかわからない人でないと、僕のことをヤンキース・ファンと呼んだりしない」と指摘したように、「コークリーは世の中の実状が何もわかっていない」というイメージが有権者の間に定着してしまったのである。

 はたして投票結果はブラウンの52%に対して、コークリー47%。米政界を揺るがす「大番狂わせ」が演じられたのだった。

レッドソックスとの多くの接点を持ってきたケネディ家。

 元々、マサチューセッツ州ではスポーツと政治が「州民の二大関心」といわれているし、歴史的にもレッドソックスとケネディ家は多くの接点をなしてきた。

 1912年、フェンウェイ・パークのこけら落としで始球式を務めたのはケネディの祖父、ハニー・フィッツジェラルド(当時ボストン市長)だったし、死期が迫っていることを覚悟したケネディが有権者に「別れ」を告げる場所として選んだのは、昨年のホーム開幕戦での始球式だった。

 これまで上院で60議席の安定多数を保持、オバマは共和党と敵対することをいとわなかった。それが、今回の敗北で安定多数を失うことになり、共和党の協力がないと法案が絶対に通らない事態となってしまった。ケネディがライフワークとし、オバマが政権の命運を賭してきた医療保険制度改革法案も、成立一歩手前で暗礁に乗り上げてしまったのだから、ケネディが草葉の陰で泣いていたとしても不思議はない。

 民主党候補がレッドソックス・ファンを敵に回したがために、米政界を激震が襲った事情がご理解いただけたろうか。

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