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スペイン一のビッグクラブを目指せ!
新体制2年目を迎えたマラガの野望。 

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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posted2011/06/17 10:30

スペイン一のビッグクラブを目指せ!新体制2年目を迎えたマラガの野望。<Number Web> photograph by AFLO

ホームスタジアムで入団発表に臨むファンニステルローイ。大勢のファンが出迎えた

 6月2日、来季へ向けたマラガの新戦力第1号、ルート・ファンニステルローイの入団発表が本拠地「ラ・ロサレダ」にて行われた。

「マラガでのプレーはキャリアの偉大なフィナーレになる。ここは今まで所属したどのビッグクラブに劣るとも思わない。たくさんのゴールを決め、このチームを助けたい」

 こう意気込みを語ったベテランストライカーを一目見ようと、スタンドには平日昼にもかかわらず1万5000人ものファンが詰めかけた。

 カタールの王族アブドゥラー・ビン・アル・サーニが3600万ユーロでマラガを買収してから、ちょうど1年が経過した。大物獲得と共に2年目のシーズンへ向けて動き出したクラブに対し、マラギスタの期待はかつてないほど高揚している。

オーナーの右腕たる副会長が打って出た、巻き返すための方策とは?

「バルセロナ、レアル・マドリーに次ぐスペインのビッグクラブになる」

 壮大な野望を口にしてマラガのオーナーとなったアル・サーニは昨夏、ポルトで国内リーグ三連覇、CLベスト8進出を果たしたポルトガルの名将ジェズアウド・フェレイラ監督と3年契約を結び、彼の希望通りに大量9選手を補強して新たなプロジェクトをスタート。

 しかし、当初の計画は早々にとん挫してしまう。チームがホーム5連敗という最悪のスタートを切り、2勝1分6敗の18位と低迷した9節終了後にフェレイラ監督を解任。その後就任したペジェグリーニ監督は冬の移籍期間に獲得した即戦力を加えてチームを作り直し、シーズン佳境の31節まで降格圏で苦しんだ末に何とか残留を決めた。

 年間予算を2500万から7500万ユーロに拡大し、夏冬合わせて選手獲得に3000万ユーロ近くを投資した見返りが11位とでは、お世辞にも成功したシーズンとは言えない。だが、元々初年度の目標は「10位以内」。早々に軌道修正を強いられる誤算はあったものの、アル・サーニの右腕アブドゥラー・グブン副会長が下したその後の決断は的を射たものだった。

 ペジェグリーニを新監督として迎えた直後、グブンは過去にセビージャ、へレス、バレンシアなどの強化担当を歴任したアントニオ・フェルナンデスをスペインサッカー協会の強化部から引き抜き、それまで自身が兼任していたスポーツディレクターに任命した。

 フェレイラ監督の意向に任せた昨夏の補強が失敗に終わった経験を踏まえての判断だった。

 国内外に多数のコネクションを持つフェルナンデスは、就任間もなく迎えた1月の移籍市場で残留の決定的要因となった即戦力5選手(バチスタ、デミチェリス、アセンホ、マレスカ、カマーチョ)の補強を実現させた。

【次ページ】 選手育成のスペシャリストを登用し、下部組織も強化。

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