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スペイン一のビッグクラブを目指せ!
新体制2年目を迎えたマラガの野望。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2011/06/17 10:30
ホームスタジアムで入団発表に臨むファンニステルローイ。大勢のファンが出迎えた
選手育成のスペシャリストを登用し、下部組織も強化。
続いて、アル・サーニが掲げるプロジェクトの根幹の1つである下部組織「ラ・アカデミア」の刷新に着手すべく、重要な人物と契約を結んだ。
エスパニョールのカンテラコーディネーターとして10年以上若手の発掘、育成を手掛けてきた育成のスペシャリスト、ジョセップ・マネル・カサノバである。
クラブが真に地元ファンに愛される存在となるには、カンテラの充実が欠かせない。
その考えに賛同してアカデミアのディレクターに就任したカサノバは、フェルナンデスとの協力により元マラガ選手のハイメ・モリーナ、マネル・ルアーノ、元マラガ監督のマヌエル・フェルナンデスらクラブを熟知する指導者を招いてアカデミアの指導体制を確立。現在はビルバオの英雄ジュレン・ゲレーロにもコーチ就任をオファーしている。
真のビッグクラブとなるために「少しずつ成長していくべきだ」。
カンテラ重視の哲学はトップチームの強化にも表れている。ファンニステルローイに続き、フェルナンデスは昨季のウィークポイントだった左サイドバックのナチョ・モンレアルを移籍金600万ユーロで獲得。さらにホアキン・サンチェス(バレンシア)、ジェレミー・トゥララン(リヨン)、ルチョ・ゴンサレス(マルセイユ)といった実力派の獲得交渉に当たる一方、その傍らでレシオ、フアンミ、ポルティージョら、トップチームで出場機会を得つつある才能豊かなカンテラーノ3人との契約を2015年まで延長している。
先日、地元紙のインタビューに応じたグブン副会長は「初年度からビッグネームを買い集めるための予算を設定することもできたが、我々は少しずつ成長していくべきだと考えた」と語っている。
彼らはトップレベルの選手を買い集めるだけの短絡的な強化よりも、マラガが真の意味でビッグクラブとなるための環境を整えることが先決と考えている。
その考えは、6万5000人収容の新スタジアム「カタール・スタジアム」、そしてトップチームからアカデミアまで全カテゴリーが共存できる12万平方メートルの練習施設の建設計画、またクラブの国際的な名声を高めるべく、バルサのお株を奪うかのようなユネスコとの間で結んだ逆スポンサー契約(今後4年間、クラブがユネスコに150万ユーロを寄付する)からも見て取れる。
マラギスタの希望は、そんなヘケ(首長)の腰を据えた改革から生じているのだ。