リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
新銀河系前夜の光と影。
~超大型補強は崩壊への序章か?~
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byReal Madrid via Getty Images
posted2009/07/18 08:00
「僕はレアル・マドリーに栄冠をもたらすために来たただのいち選手なんだから」と謙遜するC・ロナウドだが……
10日から始まったレアル・マドリーのプレシーズン。新戦力のロナウドやベンゼマは嬉々とした表情を浮かべて体を動かしていた。一方、それとは対照的にどこか伏し目がちに映る選手たちがいる。彼らは“戦力外”を言い渡された選手たちである。前者と後者の間にあるのは“迎えられた者”と“追われる者”との違いであり、それははっきりとした明暗を生み出していた。
頑なに移籍を拒む「戦力外通告」選手たち。
カカ、ロナウド、ベンゼマ、アルビオルを獲得し、さらにシャビ・アロンソ、リベリー獲りに動く一方で、強化部長バルダーノが直々に動いている案件がある。それは、戦力外となった選手たちへの移籍催促だ。練習初日、バルダーノはバルデベバス(レアルのトレーニングセンター)で9選手とそれぞれ個人面談を行った。9選手とは、スナイデル、ファン・デル・ファールト、ドレンテ、ロッベン、フンテラール、ネグレド、マハマドゥ・ディアラ、エインセ、メッツェルダーである。
レアルはカカ、ロナウドらの獲得が決まる以前からプレミアリーグ全クラブに「交渉可能選手リスト」をFAXするなど、選手放出に動いていた。その結果、サビオラはベンフィカに移籍し、上記9選手にもオファーが殺到することとなった。スナイデルにはインテルとバイエルン・ミュンヘン、フンテラールにはシュツットガルト、マハマドゥ・ディアラにはユベントスと言った具合である。だが、全ての選手に関してレアルと相手クラブ間ではほぼ移籍合意に達しているにもかかわらず、未だに交渉が成立しないのは選手本人が移籍を拒んでいるからだ。現時点の「戦力外通告」をされた選手たちは、それでも新戦力とポジション争いをしようとしているのだ。
選手の飼い殺しは内部分裂の火種となる。
だが、シーズンに入って出場機会を得ることができなければ構想外選手たちはストレスを溜め、やがてはチーム内に重大な亀裂を生む不満分子へと変貌するだろう。かつてペレス会長とバルダーノ強化部長は旧銀河系時代の晩年にチーム内がブラジル人派閥と生え抜き派閥に別れる内部分裂の失敗を経験している。そのため、今回は同じ轍を踏む訳にはいかないと躍起になり、戦力外選手の放出を急いでいるのだ。
それに加えて、不満分子となる危険性がある選手に高額な給料を支払い続けるよりも、移籍金収入と共に彼らを放出したいというのも強化部の本音だ。カルデロン会長時代に1億5000万ユーロを費やして獲得したオランダ人選手たちを放出すれば、約1億ユーロの移籍金収入が見込める。さらにディアラやメッツェルダー、エインセの移籍金を加えれば、今夏の補強費の3分の1を埋めることができる。