MLB Column from USABACK NUMBER

「マニー・ラミレスよ、お前もか」
スーパースター達の薬剤汚染 

text by

李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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photograph byGetty Images

posted2009/05/12 06:01

「マニー・ラミレスよ、お前もか」 スーパースター達の薬剤汚染<Number Web> photograph by Getty Images

 5月7日、禁止薬剤使用の廉(かど)で、ドジャースの主砲、マニー・ラミレスが、50試合出場停止の処分を受けた。以下、MLBにおける薬剤汚染問題取材については定評のあるスポーツ専門TV、ESPNの報道に基づいて事実関係をまとめた。

 ことの発端は、キャンプ中の薬剤検査でテストステロンの上昇が認められたことだった。同位元素の測定による精密検査の結果、テストステロン上昇は薬剤摂取によるものであることが示唆されたが、ラミレスは検査結果について争う姿勢を示した。そこで、MLBが調査を始めたところ、禁止薬剤のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を使用していたことを示す文書の存在が明らかとなり、「動かぬ証拠」となったのだった。

 hCGは、本来、女性不妊症の治療薬(排卵誘発剤)として使用される薬剤である。しかし、筋肉増強剤常用者の間では、ドーピングのサイクル(*)を終了した後に、ステロイドのせいで抑制された精巣でのテストステロン産生を促す目的で使用されることで知られている(サイクル直後に起こる体力・気力の「落ち込み」を和らげる効果があるとされている)。ステロイド長期連用者にとっては「必須」の薬剤であるが、ラミレスの場合も、使用目的が排卵誘発であったとは考えにくい。

(* 効果を高め、副作用を減じる目的で、ステロイド使用者は、通常、数週単位で投薬と休薬の「サイクル」を繰り返す)

“薬剤汚染オールスターチーム”を作ってみたら……。

 バリー・ボンズの偽証罪訴追、議会によるロジャー・クレメンスの偽証罪告発、A・ロッドのステロイド使用告白等、ここ数年、スーパースター達の薬剤汚染報道が相次いでいる。野球というスポーツをこよなく愛する者としては、気が滅入らざるを得ない時代となってしまった。しかし、スター選手の汚染報道の度にくよくよするだけでは芸がないので、汚染報道を逆手に取る気晴らしの手段として、汚染選手達で「オールスターチーム」を結成することを思いついた。

 薬剤汚染オールスターのメンバーとなる資格は、

(1) 1988年以降、MVPあるいはサイヤング賞を受賞していること (1988年は、ドーピング選手の草分け的存在、ホセ・カンセコがMVPとなった年)

(2) 薬剤汚染については、定評あるウェブサイト「Baseball’s Steroid Era(ベースボールにおけるステロイド時代)」のリスト(全125選手)に載っていることの二つとした。

【薬剤汚染オールスターチーム】

[一塁] モー・ボーン

[二塁] ブレット・ブーン(※)

[三塁] アレックス・ロドリゲス

     ケン・カミニティ

[遊撃] ミゲル・テハダ

[外野] ホセ・カンセコ

     バリー・ボンズ

     フアン・ゴンザレス

     サミー・ソーサ

[DH]  ジェイソン・ジアンビ

[先発] ロジャー・クレメンス

[抑え] エリック・ガニエ

(※二塁手についてはMVPを受賞した汚染選手がいなかったので、2001年のMVP選出投票で3位に入り、ゴールド・グラブ賞も通算4回受賞しているブレット・ブーンを「準オールスター」として選出した)

 オールスターチームの錚々たる顔ぶれには圧倒されるが、1988年以降に選出されたMVP全42人のうち汚染選手の受賞は19回、受賞率は45%(!)となる。MLBにおける薬剤汚染の闇の深さを考えると、やはり、気が滅入らざるを得ない。

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