MLB Column from WestBACK NUMBER

日本人クローザー 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byAFLO

posted2006/06/19 00:00

日本人クローザー<Number Web> photograph by AFLO

 今シーズンは開幕当初から日本人メジャー選手の故障が相次ぎ、取材する側にとっても何とも心苦しい状況が続いていたが、6月に入った途端、野茂投手の解雇と松井稼頭央選手のトレードというさらに大きな出来事が起こった。野茂投手は1日も早く右ヒジを万全にして再起を図ってほしいし、松井選手は新天地での活躍を期待したいところだ。

 さて今回は、不運続きの日本人選手の中にあって、順調な活躍をしている2人の日本人クローザーを取り上げてみたい。レンジャーズの大塚晶則投手とドジャースの斉藤隆投手は、4月の時点では両者ともリリーフ投手だったのに、チーム状況の都合でクローザーに抜擢。両投手が好投を続ける中、奇しくも両チームともに快進撃を続け、6月上旬はともに地区首位を走っている。

 「出る場面がわかっているので心と身体の準備ができる。(リリーフよりも)やりやすいことはやりやすいです」

 過去2年間パドレスで不動のセットアップ投手として活躍し、昨年の地区優勝の原動力となった大塚投手。オフにレンジャーズにトレードとなり、今季不調が続くコルデロ投手に代わり4月下旬からクローザーを任されている。元々日本でも経験ある役割だけに、首脳陣の期待通りの投球を続けている。

 「大塚が出れば試合が終わると相手チームに思わせたいです。そのためにも1つ1つ結果を残していきたいです」

 今年はすっかりお馴染みの“ヨッシャー”ポーズに加え、新たに入場テーマ曲『ヘルズ・ベル(邦題:時刻の鐘の音)』を手に入れ、すっかり地元レンジャーズ・ファンの心を鷲掴みしてしまったようで、取材に回った試合でも一番の声援を浴びていた。『ヘルズ・ベル』といえば、パドレス時代の先輩クローザー、ホフマン投手のテーマ曲で、大塚投手がホフマン投手の了解を得て、今年のWBC決勝戦で使用したのはすっかり有名なエピソード。その後もホフマン投手との友好関係は続いており、今季はずっとテーマ曲にしてきた。それは大塚投手にとって大きな意味のあることだった。

 「ホフマンのような風格とかを出しながら登場しないといけないし、そのためにもらった曲。ずっとホフマンを目標にやってきたし、あの曲を聴くと、彼の真似をするというか、仕草を感じ、彼を意識しながら投げている」

 過去2年間、メジャー通算2位の450セーブ(6月13日現在)を誇るホフマン投手に接してきて、いつしか大塚投手はホフマン投手の中にクローザーとしての理想を見出していた。そのホフマン投手と離れた現在、彼のテーマ曲を聴くことで、ホフマン投手の幻影を自分の中に築き上げ、クローザーとしての役割を全うしているようだ。

 大塚投手とは立場が違い、斉藤投手の場合は、あくまで“臨時”クローザーだ。とはいえ、復帰したばかりのガニエ投手が再び右ヒジ痛を訴えるアクシデントもあり、まだまだ斉藤投手の右腕に頼らざるを得ない状況に変わりはない。

 オフにドジャースとマイナー契約を結び、招待枠でメジャー・キャンプに参加した斉藤投手。今季は投手陣を補強して臨んだドジャースだっただけに、開幕はマイナーに甘んじるしかなかった。しかし開幕直後のガニエ投手の戦線離脱で、4月7日にメジャー昇格。当初は単なるリリーフ投手の補充要員扱いだったが、マウンドに上がるたびに好投を続けるとともに、主要リリーフ投手が次々に故障で脱落。あっという間に首脳陣の信頼を勝ち取り、わずか昇格から1ヶ月余りでクローザーに抜擢されていた。

 「セットアップの時より難しいです。調子以上にその時の自分の感覚を掴むのが大事になってくる」

 大塚投手同様、横浜時代にクローザーの経験を持つ斉藤投手。ブルペン投球で自分の調子を見る以上に、実際にマウンドに登ってから自分の投球感覚を掴むことを心がけている。それが好不調に左右されずに、クローザーとして安定した投球を続けられる秘訣だと話してくれた。だがそういった技術云々以上に、今年の斉藤投手から感じ取れるのは、がむしゃらさと直向きさだろう。

 「投げるために来たんです。メジャーのマウンドで野球人生が終わってもいいんじゃないですか」

 キャンプの頃から(とにかく今年1年間は自分の全精力を出し切ろう)という気持ちがヒシヒシと伝わってきた。日本でいくつかの故障を経験し、今年36歳を迎えた肉体で、初めて味わう162試合の長丁場。斉藤投手を支えているものこそ、強靱な精神力ではないだろうか。

 今回取り上げた2投手に共通するものは、まさに“熱いハート”。それを感じ取るのに言葉は必要ない。今後も日米ファンを熱くさせてくれるような投球を披露してほしい。

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