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練習方法に見える日米の選手気質。 

text by

海老沢泰久

海老沢泰久Yasuhisa Ebisawa

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posted2006/03/28 00:00

 今年のカープのキャンプは、ブラウン新監督の方針で、大きく様相が変わったらしい。

 カープのキャンプといえば、昔から猛練習で有名であった。ぼくも日南で何度か見たことがあるが、それこ大袈裟ではなく、朝から日が暮れるまでグラウンドにボールが飛びかい、選手たちは休む暇もなくそれを追いかけていた。

 それはピッチャーも例外ではなく、例年ものすごい球数の投げ込みが要求され、去年は2500球だったという。それがどんな効果を生むのか知らないが、キャンプは1カ月間で、そのあいだに休日もあることを考えれば、毎日100球を投げる計算だ。ペナントレース中は、先発して100球を投げれば、中4日ないし5日休養してまた先発する。それを考えれば、毎日100球というのがいかに苛酷なことかが分かるだろう。

 それをブラウン監督は変えたのである。

 とくに、ピッチャーの苛酷な投げ込みに対しては、

 「それはピッチングとはいわない。何も考えずただ投げているだけだ」

 といって、1人10分、約50球に制限したのだそうだ。

 日本のプロ野球の練習は、カープにかぎらず長時間すぎるとは、アメリカからやってくる選手や監督によくいわれることだ。彼らは、長時間だらだらとやるよりも、集中して短時間でやったほうがいいと考えるのである。じっさい、アメリカの練習法はそうで、チーム全体で朝から日が暮れるまで合同練習するというようなことはない。それでは足りないと思った場合は、個人で練習すればよいと考えられているのである。なぜなら、選手はみな個人事業主のプロフェッショナルなのだから。きっと、ブラウン監督もそう考えたのだろう。 ところが、就任4年目のファイターズのヒルマン監督は、まったく反対のことをした。

 去年まではブラウン監督と同じように考えていたらしく、ファイターズの全体練習は昼すぎに終わっていた。ところが、今年はそれが終わるのは午後3時すぎで、そのあとも主力の小笠原や坪井、稲葉らまでが夕方まで特打ちをしたというのである。

 それに対するヒルマン監督の答えはこうだ。「この国では多く練習し、投手は投げ込まなければならないということを学んだ」

 つまり、これまでは、アメリカ流に短時間で集中して練習し、それで足りない分は選手個人の自主性にまかせるという方法をとってきたが、この国ではそんなことをしていたら野球にならないと気づいたといっているのである。手取り足取り、ああしろこうしろといいながら、朝から日が暮れるまで練習させないとどうにもならないということだ。

 結果はどちらの監督に吉と出るか分からないが、どちらも日本人として考えさせられる話だ。

 サッカーの日本代表に対するジーコ監督の方針は、「選手の自主性を尊重する」だが、その是非論につながる話でもある。

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