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「落伍者」転じて「ビッグ4」。
英国民が渇望するアーセナル優勝。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2009/08/25 11:30

「落伍者」転じて「ビッグ4」。英国民が渇望するアーセナル優勝。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

開幕戦のエバートン戦でゴールを決めてファンペルシ(右)から祝福されるセスク。この日は2得点の大活躍だった

アーセナルに漂う悲壮感が英国民の琴線を刺激する。

 もともとアーセナルにはプレミア切っての「スタイル」がある。ベンゲルは、開幕前に『タイムズ』紙のインタビューを受けて、「チーム作りは芸術作品の創作に似ている。バルセロナのサッカーを観る私の目は芸術を見ているのだ」と語った。昨シーズン、そのバルセロナとアーセナルによるCL決勝の実現を、多くの英国民が望んでいた。ビッグ4がCLでも優勝争いの常連となったとはいえ、全国民が誇りを持てる気風と作風はアーセナルしか持っていない。

 加えて、今シーズンのアーセナルには悲壮感が漂っている。過去4年間を無冠で終えた指揮官は、Jリーグからやって来た当時の13年前と同等以上のプレッシャーを背負っている。下手をすれば途中解雇も現実的とさえ言われている。おまけに、エミレーツ・スタジアムの建設費が予算を圧迫し続けるクラブでは補強も難航。開幕戦でスタメンに名を連ねたニクラス・ベントナー、デニウソン、アレクサンドル・ソングらは、お世辞にもビッグクラブのレギュラー陣とは言えない。にもかかわらずベンゲルは、予算不足と駒不足を嘆くどころか、彼らを含むチームの可能性を強調し続けている。

 そして、毎年のように古巣バルセロナへの帰還が噂されるセスク。国内の見解は、いよいよ今シーズンがアーセナルでの見納めになるという線で一致している。昨シーズン末、「タイトル獲得には絶対に実力者の補強が必要だ」と口にしていたキャプテンは、またしても売却を優先したクラブの様子を見ながら、例年以上に複雑な心境で母国からのラブコールを耳にしたことだろう。もちろん、“ベンゲル・サッカー”の申し子であるセスクが去れば、指揮官が続投となっても「流麗なアーセナル」の存続は極めて難しい。

8月末からのマンU、マンCの2連戦が試金石となる。

 哀愁を帯びた美しき攻撃集団に、判官贔屓な性質の国民が惹かれないわけがない。アーセナルが開幕戦で手にした3ポイントと6得点は、“イデア(永遠不変の理念)の勝利”とまで讃えられた。

 アーセナルにとって試金石となるのは、現役王者のマンU、資金力世界一のマンCと続く8月末からの2連戦だ。9月に入って、「アーセナルが優勝候補の筆頭に」と報道されるようであれば、今シーズンのアーセナルには本当に期待できる。

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