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石川遼、伝説の枯れ葉。 

text by

海老沢泰久

海老沢泰久Yasuhisa Ebisawa

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posted2008/05/21 00:00

 初日の15番パー5でボールを曲げ、木の下から3打目を打とうとしたとき、バックスイングしたクラブが木の枝に当たって、打つのを中断した。このとき、枝から葉が落ちたのである。ゴルフではこういうとき、スイングに関係しそうな自然物を破損すると、故意か偶然かに関係なく、たとえ木の葉1枚を落としてもライを改善してスイングをしやすくしたことになってペナルティーになる。石川の場合もそう見なされても仕方がなかった。枝から葉が落ちたのだから。

 しかし石川は落ちたのは枯れ葉だったとして、ペナルティーを加えずにスコアカードを提出した。枯れ葉なら生きた物ではないからペナルティーの対象にはならないのである。だが、おそらくそれを見ていたギャラリーの中からだろうが、ペナルティーを加えないのはスコアの過少申告だから失格ではないかという声が上がって騒ぎになった。彼らは落ちた葉は枯れ葉ではないと思ったのであろう。そのため、ラウンド後に競技委員が記者会見をして、落ちたのは枯れ葉だったと説明する事態になったのである。

 むろん、ぼくはその場にいなかったので、落ちた葉が枯れ葉だったのか生きた葉だったのか知らない。落とした本人が枯れ葉だったと判断したのだから、きっと枯れ葉だったのだろう。

 しかし、ぼくはボビー・ジョーンズだったらどうしていただろうと思ったのである。おそらく彼なら、落ちたのが枯れ葉だったとしても、人から疑われるのをよしとせずにみずからペナルティーを加えていたのではあるまいか。そして石川もそうしていたら、いまの人気に加え、なんと清廉な少年だろうと人々にさらなる感動を与えて、もうひとつの伝説をつくっていたにちがいないと、そのチャンスをのがしたことを少々残念に思っているのである。

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