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<鉄人に訊け> 伊東輝悦さん、長く続ける秘訣は何ですか? ~新天地・甲府でJ出場試合記録更新中~
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byAsami Enomoto
posted2011/05/24 06:00
初めての“転勤”先、甲府での刺激にあふれた生活。
「途中、藤本(淳吾/現名古屋グランパス)や兵働(昭弘/現柏レイソル)あたりの若くて上手いやつが入ってきたことを刺激にしてきた。監督の交代も刺激にしてきたしね。(長谷川)健太さんはわりと長かったけど、時に外国人監督が来たりもした。違うやり方を刺激として採り入れたりしてね」
20代では与えられた刺激だったが、30代ではそれを自分で見つける術を得たのだろう。今季、18年間所属した郷里のクラブを離れたが、「自分の中ではすごく前向きに捉えている」という。あと1年清水に留まり、もし出場機会が減っていったなら、次のチームは見つからなかったかもしれない。むしろ良いタイミングだったと考えているからだ。
何より、新天地・甲府での生活が刺激にあふれている。人生36年、はじめての「転勤」だ。家族とともに清水を離れ、富士山を逆側から眺めることになった。
「エスパルスとの環境を比較して、ああだこうだ言うことは簡単だよ。でも今は、どこに行くにしても新鮮な気持ちでいられることのほうが大きい。清水で飽きていたわけじゃないんだけどね。新しい仕事仲間ができるってことも、すごく楽しいこと。何より、家族を含めてここでの生活を楽しんでいる。田舎暮らしがあっているんだと思う。でも、富士山はやっぱり静岡側から見たほうが綺麗かなと思うけど……怒られるかな? まあ、見慣れてるってだけのことかもしれないけど」
以前は、西野朗にコンバートの理由を聞いてみたかったが……。
盆地の甲府とあっては、趣味の山登りも楽しみ放題。同じ趣味を持つクラブスタッフに、山に誘ってよと声をかけているという。
新たな選手たちと競争することも、もちろん大いなる刺激だ。伊東のスタイルは、若手選手に対し、聞かれない限り自分から何かを教えないことだ。
「良くないのかもしれないけど、あんまり言いたくない。あえてそうしているというか。まだ勝負したいと思ってるんで。それに、自分自身のパフォーマンスを維持することをまずは考えているから。自分が走れて、しっかりプレーしているところを見せられなきゃ、説得力がないでしょ?」
伊東の言う“刺激”の項目には、出場試合記録の更新は入っていない。理由は「やりたいところまでやるだけ」だから。ベテランにしてポジティブに新たな環境に踏み出せる秘訣がそこにある。過去を振り返らず、常に前を見る。ちなみに以前は、五輪代表時代の恩師・西野朗にボランチへのコンバートの理由を聞いてみたいと思っていた。でも今は「どうでもいい」のだという。
◇ ◇ ◇
◆伊東輝悦さんへのQ&A
36歳。静岡県清水市出身。ヴァンフォーレ甲府所属
Q1 あなたにとってサッカーとは?
生き甲斐。
Q2 何歳まで現役を続けたいか
やれるところまで。
Q3 自分を変えた一言・出来事
アトランタ五輪。
Q4 自分を寿司ネタにたとえると
玉子。地味だけど外せない。