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指宿洋史 「未知なる193cm砲の挑戦」 

text by

川内イオ

川内イオIo Kawauchi

PROFILE

photograph byToru Morimoto

posted2009/04/21 09:00

指宿洋史 「未知なる193cm砲の挑戦」<Number Web> photograph by Toru Morimoto
これまでの“海外組”になかったケースと言っていいだろう。日本では無名のティーンエージャーが、2部とはいえスペインのプロクラブと契約を結んだ。
指宿洋史――。彼は一体、何者なのだろうか。

 3月某日。ジローナFCの選手たちは、初夏を思わせる眩い陽射しの下、ホームスタジアムのムニシパル・デ・モンティリビでボールを追っていた。

 その日の最後に行なわれたのは、GKを置いた4対4のトレーニング。ボールをキープしていながら、なかなかゴールに迫れない攻撃側に対し、監督が苛立ちの声を上げる。

 そんな重苦しいムードを、一際背の高い男が一蹴した。ペナルティーエリアの外から豪快なミドルシュートを放ち、ゴールネットを見事に揺らしたのだ。眠そうに練習を眺めていた地元記者たちから拍手が沸く。監督は満足そうに一言、叫んだ。

「ビエン(いいぞ)、ヒロシ!」

スペインで日々成長する大型ストライカーの可能性は。

 地元の千葉県流山市で幼稚園の頃からサッカーを始めたヒロシ指宿洋史は、小学校4年生のときに柏レイソルのセレクションに合格し、高校3年まで柏一筋でプレー。長身ストライカーとして関係者の注目を集め、16、17歳以下の日本代表にも選ばれた。

 しかし、柏のトップチーム昇格は叶わなかった。それでもプロの道に進みたいと思っていた指宿は、アルビレックス新潟の入団テストを受ける。新潟からは好感触の返答を得ることができた。昨年9月のことだった。

 それから2カ月後の11月、17歳の指宿にひとつの転機が訪れる。日本在住のスペイン人サッカー関係者から誘いを受けた。「スペインのセグンダ(2部)にジローナというクラブがある。そこのテストを受けてみないか」。

 Jリーグへ進む道も残されていた指宿だったが、ここでスペイン挑戦を決断する。

「小さい頃から中田英寿選手とか、海外で活躍する選手に憧れていました。中学生のときには、いつか自分もヨーロッパでプレーしたいと思っていたから、テストの話を聞いたときは是非受けたいと思いました。スペインの2部はレベルが高いと聞いていたし、ジローナは2部に上がったばかりのクラブ。いろいろ注目されているかもしれない。最終的には世界のトップリーグでプレーしたいので、その目標に近づくには、Jリーグよりもスペインのほうが可能性が高いかなって」

 こうして昨年11月末、指宿は単身ジローナに乗り込み、1週間にわたるテストに臨んだ。

【次ページ】 言葉も通じない初めての外国で仲間ができた。

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