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指宿洋史 「未知なる193cm砲の挑戦」 

text by

川内イオ

川内イオIo Kawauchi

PROFILE

photograph byToru Morimoto

posted2009/04/21 09:00

指宿洋史 「未知なる193cm砲の挑戦」<Number Web> photograph by Toru Morimoto

言葉も通じない初めての外国で仲間ができた。

 滑り出しは上々だった。初日の紅白戦でゴールを決めた。しかしその手応えよりも「異国にいる」という実感のほうが大きかった。

 生まれて初めての海外。しかもスペイン語の知識はほぼゼロ。練習中、監督やコーチの指示を理解できない。チームに合流した当初は不安と緊張の連続だった。

 指宿にとってラッキーだったのは、周りの選手たちが温かく迎えてくれたことだ。選手たちとの身振り手振りを交えてのコミュニケーションのおかげで、スムーズにチームに溶け込むことができた。具体的な会話はできないものの、日が経つにつれてちょっかい程度に絡んでくれる選手が徐々に増えていったことも指宿にとっては嬉しい出来事だった。

 ジローナの選手たちにしてみれば、指宿にただならぬ興味を持っていたのかもしれない。ジローナは今シーズン、50年ぶりに2部昇格を果たしたクラブ。しかも3部はルール上、外国人選手の獲得を禁止されているため、ほとんどの選手は初めて“東洋人”とプレーするわけだ。それがはるばる日本からやってきた20歳に満たない青年。しかもチーム最年少で、見上げるほどの長身ときている。身長193cmの選手は、1部のプリメーラ・ディビジョンを見渡してもそうはいない。

ジローナFCのフロントが驚いたその才能。

 ジローナの戦力補強を統括するスポーツディレクター(SD)のハビエル・サラメロは、指宿のプレーを見て、「とても驚いた」という。

「背の高さは他の選手にない大きな魅力。足元のボール扱いもしっかりしているし、まだ若いのに状況判断に優れている。相手のマークを外して、少ない動きでゴールを狙うのが上手いんだ。これまでかなりの数のFWをテストしたけど、ヒロシが一番良かった」

 SDのお墨付きをもらったとはいえ、テストの合否を出すのは現場のトップである監督だ。幸い、指揮官のラウール・アグネもSDと同意見だった。

「一目で気に入った。テクニックもあって、ポテンシャルが高い」

 テスト最終日、ジョセップ・グソー会長がクラブとしての決断を下した。

「ヒロシの将来性を信じよう」

(続きは、Number727号で)

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