野ボール横丁BACK NUMBER
二大アンダースロー投手の徹底比較。
牧田と渡辺俊は打者からどう見える?
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byToshiya Kondo
posted2011/05/16 11:55
通常のアンダースローよりさらに低い位置から繰り出される独特のスタイルを持つ牧田和久。スライダー、カーブ、シンカー、シュートなどの球種を持つが、マックス135キロしか出ていないストレートも、テンポや握りを変えたりするなどして変化をつけていると言われる
上がって落ちる渡辺俊介の球とはまったく違う!?
現在、球界を代表するアンダースローといえば、千葉ロッテの渡辺俊介だ。だが、中村によると渡辺とも見え方が異なるという。
「俊介さんともぜんぜん違う。俊介さんはどちらかというと、シンカーのイメージが強い。上がって、落ちる。だから逆。牧田もシンカーを投げてますけど、俊介さんほどのキレはない。ただ、緩いだけという感じ」
渡辺のストレートについては、以前、日本ハムの小谷野栄一がこんな風に話していたことがある。
「ソフトボールを下手で投げてもらったのと同じ感覚ですね。カーブもソフトボールのチェンジアップに似ている」
キャッチャー目線になるが、千葉ロッテの田中雅彦も、渡辺のボールを受けたときの印象をやはり「ソフトボール経験」を思い出しながら語っていた。
「ソフトボールの球って、打つのが難しいじゃないですか。あれと同じです。ライジングボールっていうんですかね。ふーっと浮いてくる感じです。こう、どこまでも浮き上がっていってしまうような(キャッチャーミットを頭の上に掲げながら)。だから思った以上に速く見えると思いますよ。そこに変化球もありますしね。カーブは曲がるというよりは、ブレーキがかかって、なかなかこない。だからみんな自分のスイングができないんだと思います」
牧田のストレートは「グワッ」で、渡辺は「ふーっ」。
下から上へという軌道は同じでも、牧田の真っ直ぐは「グワッ」で、渡辺の真っ直ぐは「ふーっ」。どうやら、このあたりが二人のいちばんの違いのようだ。
ただ、いずれにせよ、田中が指摘するように「自分のスイングができない」という点では共通している。要は幻惑されているのだ。
それだけに、小谷野は渡辺と対するとき、こう自分に言い聞かせるのだという。
「いい意味でテキトーに」
なかなか含蓄がある。