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【第76回ダービー・プレビュー】 武幸四郎 「今年はチャンスだと思っている」
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byNorihiko Okimura
posted2009/05/29 11:00
まるで沈みこむような……驚くべき末脚を発揮。
他馬の進路を妨げたりしなかったので制裁はなかったが、レース後、彼は角居とともに裁決委員に呼び出された。
「『あの馬はどうなっているんだ』と訊かれたので、『ハンドルが利かないわけじゃないので、キャリアを積むことによって直していけます』と言い、わかってもらいました」
2戦目は2月7日、同じく京都芝1600mで行なわれた未勝利戦。結果は4着。
「3番手につけ、道中、いい感じで走っていたのですが、直線に向いたら競馬をやめるような感じになってしまいました」
舞台が阪神に替わった3戦目、芝1600mの未勝利戦。出遅れて中団のインを進み、直線で前があくと、内にモタれながらも鋭く伸び、初勝利を挙げた。
「乗りながら、『返し馬では跳ねちゃダメ』とか『レースではまっすぐ走るように』と教えていきました。『直線では一生懸命走るんだよ』と教えようとしたとき、道中、力むところがあったら、『逆だよ。今は楽に走っていいから』となだめたり。あのころから動きが変わって、直線でグーンと沈むような走りになりましたね」
次第に悪癖が矯正され、調教での動きにも鋭さが出てきたトライアンフマーチは、2着までに優先出走権が与えられる皐月賞トライアルの若葉ステークス(阪神・芝2000m)に駒を進めた。
「レース前、『出走権は多分とれます』と角居先生に言ったんです。内枠(16頭立ての6番枠)だったので、ゲートを出して行って、好位で競馬をし、それなりに伸びたのですが、2着に負けてしまった。レース後、厩舎スタッフと『前半で脚をためたら、最後はもっと切れるでしょうね』といった話をしました」
2着に敗れはしたが、皐月賞でのラスト3ハロンはメンバー最速だった。
そして4月19日の皐月賞(中山、芝2000m、GI )。やや出遅れたが、無理に前を追いかけず、ポツンと最後方に待機した。
「後ろから行こうと決めていたわけではなく、ゲートを出た感じと、そのときの馬の雰囲気によって位置取りを決めようと思っていました。ぼくの馬はすごくよくなっていたのですが、アンライバルド、ロジユニヴァース、リーチザクラウンの『3強』は強いと思っていたので、それらを相手にどこまでやれるかな、という気持ちでした」
直線、トライアンフマーチは大外を凄まじい脚で伸び、勝ったアンライバルドから1馬身半差の2着に飛び込んだ。ラスト3ハロン34秒4は、メンバー中最速だった。
「教えてきたことが実を結び、素晴らしい脚を使ってくれた。まだ少しフラつくところがあるのですが、許容範囲です。この馬とともに臨むダービーは、これまでの6回とは違ったものになると思います」
(続きは、Number729号で)