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最先端のテクノロジーで
イチローを堪能する。
~本人太鼓判の一冊が電子書籍に~
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2011/04/20 06:00
『電子書籍版イチロー・インタヴューズ』 石田雄太著 文藝春秋 1500円(税込)発売中
著者がいかにしてイチローとのインタビューに挑むのか。その心理描写から始まる冒頭部分からグイグイと引き寄せられ、新書版『イチロー・インタヴューズ』は379ページの分厚い内容ながら、一気読みを果たした。
ガッとテンションを上げ、どれくらいの分量を読み進めたかを計りながら、その達成感とともにまた次のページをめくっていく。読書とは、登場人物に感情移入しつつ、情熱的に読み上げるべきだと考えてきた。
ところが、今回手にした『電子書籍版イチロー・インタヴューズ』ではその考えがひっくり返ってしまった。いやはや、こんな読書の楽しみ方があるのかと。2011年春現在の電子書籍技術の最先端テクノロジーがほぼすべて搭載された本書に、やられてしまった。
編集部から、ポンとiPadを手渡された。もちろん、その電子機器の存在は知っていたが、まともに触ったことがない。最初はスクリーンタッチにすら手間取った。ページのめくりかた、次章への進み方が分からずフラストレーションを感じ、画面のバックライトに目がちらつきながら読み進めなければならなかった。
試合シーンの映像やNumber撮りおろしの関連ショットも。
それでも、45分ほど操作を続ければ、アジャストできる。サッカーなら、前半戦の観戦を終える程度の時間だ。
iPad自体の操作に慣れると、一気に新しい読書の世界が開けてきた。画面上でページがすっとめくれる感覚が病み付きになる。読書中、画面下方をタップすると、章の中の何%くらいを読み進めたのかが表示される。この機能のおかげで現在どれくらい読み進めたのかを迷うことはない。そして各章を読み終えると「読了」のスタンプが押され、これがまた次の章への読書欲を駆り立てる。電子版ならではの機能だ。書籍版がデカい山に一気に臨むとしたら、電子版は小さい山を次々とクリアしていく感じだった。
さらに本文中の所々に入っている青い矢印マークをタップすると「別世界」が。なんと、本文の中で描写されているイチローの試合シーンが映像で再現されるのだ!
読書とはまた、「行間からシーンを想像するもの」とも思ってきたが、これもひっくり返された。情景がはっきりと見えると、内容がヴィヴィッドに伝わる。各章の冒頭部分にふんだんに掲載されたNumber撮りおろしの関連ショットも同様の効果をもたらしてくれる。これもまた、書籍版にはない魅力だ。